火山の噴火が「小氷期」の引き金となった | さまようブログ

火山の噴火が「小氷期」の引き金となった

 いわゆる「小氷期」にはいろいろな議論があります。何が原因なのか、今よりどの程度気温が低下していたのか、そもそも中世の小氷期は地球規模で起きた現象だったのか、などなど。
 いちおう、「原因は太陽活動の低下か火山活動の活発化(またはその両方)・気温低下幅は1℃以内・北半球、特にヨーロッパで顕著だったが全球規模で気温が低下したとする根拠はない」というのが、現時点で最もよく知られた理解だと思います。
 (太陽活動の低下が小氷期の原因だとする意見は広く普及しており、実際、太陽活動の低下でイギリスにおける小氷期の気温低下は説明できるとする報告を以前紹介しています。が、これはあくまでイギリスの話であり、全球規模で小氷期を説明できるというわけではありません。)

 先日、小氷期と太陽活動・火山活動に関する報告が発表されました。
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/01/volcanoes-indicted-for-europes-l.html?ref=hp 
http://www.agu.org/pubs/crossref/2012/2011GL050168.shtml 
 
 1150年頃から、グリーンランド南部の平均気温は低下しはじめています。しかしこの時期、太陽活動の低下はまだ見られていません。一方で、大気中に大量の硫酸エアロゾルが放出されていたことが、アイスコアの分析により確認されました。これほど大量の硫酸エアロゾルの放出源は、火山の噴火以外に考えられません。少なくとも、小氷期の「始まり」は太陽活動の低下と無関係と言ってよく、火山活動の活発化による、というのがこの報告の結論です(具体的にどの火山が噴火したのかは現段階では不明です)。
 
 次なる問題は、これに続く小氷期において、火山活動だけでなく太陽活動の低下もまた影響を与えていたのかどうか、です。しかし、これも明らかな相関があるとは判定されませんでした。では火山活動なのでしょうか?
 通常の理解では、よほど巨大な噴火でない限り、火山からの噴出物が何十年・何百年も寒冷な気候をもたらすことは考えにくいように思えます。しかし、一時的な寒冷化→大西洋を南下する氷山が増え海水の塩分濃度低下→メキシコ湾流の弱体化というフィードバックにより説明可能、との結論がモデル計算により得られました。小氷期の気温低下はヨーロッパで顕著だったことも、これでうまく説明できます。

 これをもって「小氷期と太陽活動は無関係」ど結論付けられたりはもちろんしません。太陽活動はあまり関係ないとする側にちょっと針が振れた、という程度でしょう。実際、太陽活動と関係があるとする報告もあるわけですし。
 とりあえず、「太陽活動が停滞する時期に入るからこれからは寒冷化する」と自信満々の主張が見られますが、そもそも太陽活動がマウンダー極小期なみに低下しても平均気温が低下するという確証はないことを理解しておく必要はありそうです。