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戦後を生きた日本人がほとんどすべて身につけてしまった、特殊な世界認識の鋳型、固定観念がある。「アメリカを通してしか世界を見ない」というのご、それだ。

そもそも、戦後の日本人は、「太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」の狂歌どこり、日本の開国はペリーの浦賀来航(千八百五十三年、嘉永六年)から始まったと思い込んでいる。それより百五十年も前に、ロシアの、それも「西の出口」に日本語学校が設立されていたなどとは、思いもよらないことだった。

遠景が近景に見える錯誤によって、普段、わたしたちは見落としがちだが、それくらい、日本人のなかには、中国を源泉とする思想が連綿と受け継がれているのである。これを、わたしは「歴史時間の体内蓄積」と表現したい。この歴史時間の流れをはっきりと自覚することも、戦後というわずか六十余年の特殊な時代の固定観念から脱却する上で非常に重要である。

日本人には、ただ影響を受けてまねるだけでは飽き足らず、外来の文化を吸収、受容しながら変容・進化させて、独特のカルチャーをつくりだすという特質が、どうやら昔から備わっているようだ。

「国際人」は何も戦後に登場したわけではない。まして、英語が話せるから「国際人」なのでもない。異なる国の人たちにも心を開き、自分を相対化して見ることのできる人間が「国際人」なのである。

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欧米人が口にする広義の「チャイナ」すなわち、中華人民共和国に台湾、香港、それから華僑国家と呼ばれるシンガポールを含めた「チャイナ」ーを、中華人民共和国を指す教義の「チャイナ」と英語で厳密に区別する言葉としては、「グレーターチャイナ」という言葉がある。これを日本語に訳したのが「大中華圏」だ。

大中華圏というネットワークに着目する時、はじめて中国本土の動きが意味するものも見えてくるのである。

そういうシーンを見るにつけ、大英帝国が遺した目に見えぬ「文化的埋め込み装置」が、いかに現代社会のネットワークん形成するうえで有効に働いているかを思い知るのである。

すなわち、シンガポールは、大中華圏の南端に位置して中国の成長力をASEANにつなぐ基点になると同時に、インドそしてオーストラリアの成長力をもASEANにつなぐ基点になりつつあるのである。

冷戦時代、わたしたちは、米ソという突出した超大国が世界を動かすという図式で世界を見てきた。しかし、今日の世界は、どこかに傑出した国や地域によって突き動かされているという見方では、なかなかとらえることができない。むしろ、こういった地下水脈のようなネットワークの連動、発展としてとらえるべき時代に入っているのだ。

大中華圏の地下水脈には、イデオロギーを超えた「中華民族」意識ぐ脈打っていた。「ユニオンジャックの矢」の地下水脈には、イギリス連邦に共通する文化的・社会的インフラが脈打つ。

ネットワーク型の視界をもつということは、一見バラバラに見える断片的な現象・情報に対して「相関の知」を働かせることである。

七0年代には弱みにすぎなかった再生可能エネルギーの「小規模・分散型」という特徴が、いま、電気自動車やITと連動することで、新たな、そして画期的な意味をもち始めようとしているのだ。

いま世界は、超大国が支配した冷戦時代を終え、バラバラに分散された小さな部分がネットワーク化され相関することで、全体として大きな統合された力を発揮するような時代へと向かいつつある。

九十年代には、「冷戦の勝利者アメリカ」「唯一の超大国アメリカ」「アメリカの一極支配、ドルの一極支配の時代が到来」といく世界観が多く流布した。ちょうど、軍事技術の民生転換によってIT革命が起こり、アメリカ経済が復活した時代でもあった。こうしたアメリカ流資本主義の世界化を「グローバリゼーション」といい、「日本の企業もアメリカ型の経営に習わなければ」という観念が、日本の経営者の頭に埋め込まれていくのである。





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