「小説 舟木一夫 第五章」 一気読み | 武蔵野舟木組 2024

武蔵野舟木組 2024

               さすらい

 

第五章   高校時代その1

『手錠』

尾西線の電車の中から、成幸は飛ぶように萩原駅のホームに降り立った。

改札口の時計は、一時十分をさしていた。土曜日なので、高校は昼までなのである。改札口に立っているのは、顔見知りの若い駅員だった。「やぁ!」と気軽に声を掛ければ、それだけで楽に出入りが出来る。しかし成幸は、ポケットから定期券を取り出して、おもむろに駅員に示した。定期券は、萩原、名古屋間で、その淡い青色の券には、赤い字で「学」と言う字が記されてあった。昭和三十五年四月、成幸が名古屋市内にある私立愛知学院に入学した時、初めて買って貰った定期券だった。何んとなしに、成幸は定期券を持って学校に通うのが嬉しかった。朝、萩原の駅から、通勤や通学の人でごった返した電車に乗って、学校に行く。それまでは小学校にせよ中学校にせよ、自転車に乗って通学していた成幸とっては、こうして電車に乗って通学すること自体、急に大人の仲間入りをしたような気がしたのである。「これで今西や斎藤が一緒だったら」と成幸は思った。今西誠は、尾張一宮の少し先にある木曽川高校に進み、斎藤昇は萩原中学の課程を終えると、家庭の事情から家業のパン屋の手伝いをしているのだった。新しい環境が開けつつあった。成幸は新調の詰襟に身を包んで、毎日愛知学院に通った。愛知学院での新しい生活で、成幸を驚かせたのは、授業の中に「宗教の時間」と言うのがある事った。動物園で名高い東山公園から、さほど遠くない所にあるこの学校は、曹洞宗に関係があると言う事で、特に生徒たちの精神修養と称して、座禅を行っていたのである。校門の右側にある、二階建ての建物の中で、成幸は他の生徒たちと一緒に正座をさせられ、座禅を組まされた。長い時間、同じ姿勢で座っていると、いつの間にか足がしびれてきた。しかしちょっとでも姿勢を崩すと直ぐに見回りの先生から、遠慮会釈なく長い棒で腰のあたりを叩かれた。「とんでもない学校に入っちゃったな。大体座禅なんて、俺の柄じゃないよ」心の中で、成幸は大いにぼやいた。が、実際をのボヤキを聞いてくれるような友だちは、まだ学校には居なかった。

第五章 高校時代 その2

『手錠』

成幸は、駅の前にある自転車の預り所に近づいた。その日も学校では座禅があった。散々絞られたおかげで、彼の膝から下はすっかり痛くなっていた。「どうも今日はついてないなぁ」と彼は考えた。まっすぐ家に帰るのは早かった。そこで彼は、そこで彼は、自転車で西原先生の家に遊びに行く事を思いついたのである。中学を卒業してからも、成幸は何かにかこつけては、西原先生を訪ねた。顔を見さえすれば、悪口を言うか、お説教をする先生だったが、初年は不思議にこの先生の事が好きだった。先生の前に出ると、何となくそれまでの嫌な事、悲しい事を忘れてしまうような気がした。成幸は自転車を飛ばした。先生の家は、日光川を更に先に行った、木曽川の堤防の近くに有るのだった。ペダルをこぐ足が、午前中の座禅の為に痛かった。先生の家についたら、散々ぼやいてやろう。成幸はこう思って、懸命にペダルを踏むのだった。

西原先生の家の前で自転車を止めると、人の気配を感じたのか、庭の中からしきりに犬の吠える声がした。先生が可愛がっているコリーのオスだった。その声を聞きつけて、先生の奥さんが顔を出した。「あら上田さん、丁度悪い時に見えたのね」奥さんが気の毒そうに言った。先生は少し前に、萩原の友人の家に遊びに出掛けたと言うのである。「でも一時間ほどで戻ると言っていたから、良かったら上がって待っていらっしゃいな」成幸は少しためらった後で、待たせて貰う事にした。直ぐに引き返すのは、足が痛くてやりきれなかったからである。それに一時間ほどで帰ってくるなら、顔を見て行きたい。という気もあった。「ピアノの練習は続けてらっしゃるの」お茶を入れながら、奥さんは台所から声を掛けた。「ええ、週に二回。でも中々上手くならないんです」成幸は頭をかいた。この頃、彼は西原先生の口ききで、東寺NHK名古屋放送合唱団の指揮者であった、山田昌宏氏の許に、ピノの練習に通っていたのだった。「お宅はお変わりありませんの?」奥さんは気を遣って、何かと話し掛けてくれた。しかし実のところ、こうして大人と差し向かいで話すと言う事が、成幸は苦手だった。どうもその日は、朝からツイていないようだった。

成幸は退屈して、先生の本棚を覗いた。姉の恵子が幼い時分から本が好きで、いろいろの文学書を集めていたりしたため、成幸もその影響で、本には興味があった。文学全集がある、モームの作品集がある、ベートーベンの伝記がある。成幸はいかにも西原先生らしい好みにあふれた、この本棚を覗き込んだ。すると真ん中の段辺りに、きらりと光るものがあった。

興味を惹かれて取り出してみると、それは鈍い銀色に光っている手錠だった。恐らく西原先生が、東京にでも出かけた時に買って来た玩具だろう。…そう思って、成幸は良くテレビなどで犯人がされるように、両手を前に組み、自分でその手錠をはめて見た。しかし、それは意外に痛かった。外そうとしてもがけばもがくほど、手錠は生き物のように一層強く少年の手首を締め付けた。「大変だ!奥さん!手錠が取れなくなっちゃった!」成幸は困って泣き声を出した。それから大騒ぎになった。奥さんが,西原先生の出先に電話を掛けて、至急に戻ってくるように連絡した。

「馬鹿野郎!それは駐在所に勤めている友達にねだって、無理に借りて来たもんなんだぞ。交番に行って合鍵で外して貰わなくちゃ、一生かかっても、その手錠は外れんぞ」帰ってくるなり、西原先生はいきなり大きな声を出した。それからが大変だった。手錠がはまっているので、自転車にも乗れず、成幸は西原先生に付き添われて、萩原の目抜き通りをとぼとぼと歩く羽目になってしまった。「あれ!上田の息子じゃないか?手錠掛けられて、一体どんな悪い事をしよったんじゃろ?」いち早くその様子を見つけた町の人達は、そっと噂しあった。「だめだ!今日は徹底的についてない」成幸はすっかりやけになって、交番への道をたどるのだった。足ばかりでなく、手首までが、千切れそうに痛かった。人の良さそうな老巡査に、さんざん笑われてやっと合鍵で外して貰ったものの、それは彼にとって、高校に入って間もなく起こった、忘れられない思い出である。

 

第五章   高校時代その3

『英語と数学』

「どうだいうまく行ってるかい?」それは、萩原銀座の商店街の一角だった。レコード屋に行った帰り、偶然向こうからやってくる今西に出会った。彼は成幸の顔を見るなり、いきなりそんな事を言った。「まあまあだな、君は?」「何となくさ、毎日本を読んだり、思いつくと下手な小説や詩を書いたりしているよ」今西は笑った。彼の手に、文庫本の詩集を持っていた。「萩原朔太郎詩集」とそれは読めた。成幸はその本を何となくめくってみた。「貴女のさまようからだの影から 貧しい漁村の裏通りで、腐った魚の臭ひがする…」

そこには、そんな抽象的な言葉が並んでいて、成幸の理解を苦しめた。今西は成幸の手にしていた、LPのジャケットを眺めた。「トリオ・ロス・パンチョス」という文字が、色とりどりの文字で記されてあった。彼らはお互いに戸惑いを感じ、それから顔を見合わせて笑った。彼らが学ぼうとしているのは、一体何なのか。成幸も今西も、それは判らなかった。しかしお互いに自分の道を、確実に歩き始めているのは確かだった。「俺ね、毎日自分の歌をテープに吹き込む練習してるんだ。後で聞いてみると、いろいろ欠点が判るんだ。例えば今の俺にはどうしても歌の中にブレスが入るんだ。それをどうにかして直さなくちゃ」熱っぽく成幸は話した。今が一番大切な時なのだ。と彼は考えていた。今やらなくては何年かたってからのんびりやっていたのでは追いつかないのだと。それは、近年とみに年齢的に若さを加えて来た芸能界を目指すものにとっては、当然の考えかも知れなかった。しかし地方の一少年に過ぎない成幸が、当時そこまで考えが及んでいたと言う事は、彼の時勢に対する「読み」の鋭さ(決して彼自身はそれを意識していなかったが)を表していると言って良かった。「今西、チョット会わないうちに、俺より大きくなったんじゃないか?」肩を並べて歩いていて、成幸はふとそんな事に気付いた。「あぁ二センチくらい伸びたよ。いつまでもシゲちゃんみたいなチビじゃないよ」今西がからかった。「癪だなぁ、その内きっと追いつくからな」そんな時、成幸は本当にむきになって口惜しがるのだった。しかしたった一つだけ、成幸にはいくら人に負けても、一向に腹の立たない事があった。

それは学力だった。高校での授業で、彼は英語と数学が最も苦手だった。家に帰っても、歌の練習ばかり気を取られて、みっちりと復習ひまがなかった。英語にせよ数学にせよ、基礎をしっかりのみ込んでいないと、次に進んでも全く判らなくなってしまう。成幸がそうだった。特に数学の成績がひどかった。授業を受けていても、何を言っているのかさっぱり判らない。しかし成幸は、それは仕方がない事だと思っていた。自分に今、必要なものは歌であって、決して数学や英語ではないのだと、それはある意味では滑稽な事ではあったが、今の彼の信念であった。高校二年の春、定期試験が行われた。成幸は出席したものの、どうしても数学と英語が判らなかった。「だめだ!こいつはいくら考えたって、無駄だぞ…」そう考えた成幸は、殆ど白紙のまま、問題用紙を教壇に出して、さっさと帰ってきてしまった。

しかしそれがいけなかった。それから三日ほど経って、成幸の家には一枚のはがきが舞い込んだ。「ご子息の成幸君の事で、至急お目にかかりたい事があります。ご面倒ですが、一度本校へお訪ねください」愛知学院からの、父兄宛の呼び出し状だった。

第五章 高校時代 その4

「修学旅行」

「いやぁ、とんでもない事で、全く私どもの不行き届きで、何ともお詫びの言葉がございません。帰ったらよく言い聞かせますから…」愛知学院の職員室で、栄吉はしきりに首をすくめていた。その日、彼は成幸の成績の悪い事で、担任の竹中と言う先生から呼び出されたのである。栄吉はすっかり恐縮しきっていた。「だから俺はこんなところ行くのはやだって言ったんだ。それをあいつが無理に行かしやがって…」彼はその日の朝「やっぱりこういう事はお父さんでなくちゃ」と、言葉巧みのおだて上げた、妻を怨んでいた。

「ところでお父さん、もう一つあるんですが」先生は言った。愛知学院では毎年高校二年の夏、修学旅行が行われる事になっていた。参加費が馬鹿にならないので、四月から月に三千円ずつ、生徒たちに積み立てをするのが定めである。ところが成幸はどうした事か、この会費を、一回も収めていないと言う事だった。「そんな馬鹿な事は有りません。毎月ちゃんと、借金取りみてえに取りたてやがるんだから」こう言い掛けて。栄吉は口をつぐんだ。「もしかしてシゲのやつ…」彼は成幸が、たえずレコードを買って来るのに気付いた。「申し訳ありません。それは帰りましたら、十分言って聞かせまして」栄吉はまた首をすくめなければならなかった。「本当のあの野郎のために、今日はさんざんだ。大の男がカエルみてえに、何度も這いつくばったんだからな」栄吉は内心かっかとして、家に戻って来た時だった。運悪く、成幸は土間で、テレビの野球中継を見ていた。「あ、お父さん、歓びなよ、巨人勝ってるよ」吞気な顔で、こう云ったからたまらない、成幸はいきなり平手でひっぱたかれた。「喜んでなどいられねえよ。お父さんは今日、お前のお陰で大恥かいたぜ」

それからお説教だった。いつも手が出てから始まるのである。その時は、さすがに成幸もしょげた。歌の練習の合間を見つけては、慣れない方程式に頭を抱えたりした。使い込んだ参加費を、また父親に出して貰って、成幸はその年の夏、修学旅行に加わった。行く先は北海道で、十泊十一日の大旅行だった。始めて見る豪快な北海道の山山や、神秘な緑をたたえる湖。そのどれもが彼にとって新しい驚きだった。

「今の自分には、まだ知らない事が多過ぎるのではないか」と成幸は思った。それは修学旅行で得た、新しい収穫であった。街頭で焼くトウモロコシの匂いが、どことなく詩情を感じさせる函館の町で、成幸はアイヌの木彫りの熊と、アイヌ更紗の状差しを買った。熊は父の栄吉の為に、そして状差しは母の為の土産だった。「あっそれからこれも…」土産物屋の店先で、成幸はチョット顔を赤らめて、ウィンドウに飾ってある、これも木彫りの小さな人形を指さした。それは髪を長くしたアイヌの少女で、身には紺と水色とが互いに混ざり合ったアツシを着ているのだった。その人形を、成幸は水色の少女の為に求めたのである。高校に入ってから、成幸はまだあの少女に巡り会えなくなっていた。しかし、またいつか必ず会えるという、確信のようなものが、彼の中には在ったのである。

萩原に帰って、成幸は北海道の土産を両親に渡した。姉や弟の為には,土地のお菓子を買ってきた。「そんな無駄使いしなくていいんだ。ただでさえお前の旅行には、普通の人の倍のお金が掛かっているんだからな」栄吉は、熊を手にしながら、そんな文句を言った。しかし成幸が自分の部屋に行ってしまうと、とたんに愛想を崩して、かたわらの妻に言った。

「どうだい?シゲも気が付くようになったじゃないか。俺に土産だってよ」彼は子供のように、自分の枕元に熊を飾った。栄吉はこういう形で、愛情を表現する、人の良い父親なのだった。

第五章 高校時代その5

「冷たい骸」

秋が深まった。

成幸の部屋も窓からは、一面の稲穂が見え、それが全て美しいい黄金色に揺らめいている。この一週間ばかりというもの、成幸は今西に会っていなかった。何となく懐かしくなって、彼は自転車を取り出した。今西の家は、萩原の駅を左に見て、更に百メートルほどまっすぐ行ったところにあった。成幸は自転車を降り、勝手を知った窓際で今西の名を呼んだ。

「マコちゃん!マコちゃん!」窓が開いた。しかし中から顔を出したのは今西ではなく、彼の母親だった。母親の表情を見て、成幸は立ちすくんだ。彼女の目からは涙が溢れ、上瞼は赤く腫れあがっている。「シゲちゃんね」とつぶやくように母親が言った。

「誠は死んだのよ…」「えっ!」成幸は息をのんだ。そんな馬鹿な事が、と思った。信じられなかった。

しかし今西誠は、外に面した窓際の部屋に、静かに横たわっていた。四日ほど前に今西は学校から帰って来るなり、急に腹痛を訴えだ。医者が呼ばれ、診断した所、大腸カタルだと言う事だった。二日ばかり経つと痛みが和らいだ。「病気が治ったら、シゲちゃんとうんと何か食べたいなぁ」今西はそう言っていたそうである。重湯以外は与えれていなので、彼は無性に空腹を感じるらしかった。すでの病症は快方に向かっていた。弱そうに見えるものの、小学校時代から、病気らしい病気は何一つした事のない今西だった。ところがその日の昼前、突然異変が起こった。静かに寝ていた今西が、急に体をねじって苦しみだした。額からは一杯に汗が吹き出し、目は血走っていた。医者が駆けつけた時には、既に今西の意識はなかった。腸閉塞を起こしたのだった。

「マコちゃん・・・」成幸は、最も親しかったこの友人の手を取った。温かだった彼の手は、もう永久に冷たかった。「シゲちゃんが一番に来てくれてたというのも、あの子が招いたのかも知れませんね。余り急で、まだ知らせてもいないのに…」母親は涙をぬぐった。成幸は今西の手をしっかり握ったまま、永い間じっと同じ姿勢で座っていた。彼の冷たい手の感触が、ようやく成幸に、この死を信じさせた。

成幸は外に出た。余りにも急な、余りにもはかない親友の死だった。今西の家のそばを、その日も小さな小川が流れていた。小学校六年の時、成幸の祖母が死に、その時彼は今西と一緒に、この川の流れを見ていたのである。その時の川は、色ひとつなく澄みきっていた。しかし今の川は、成幸の心を象徴するように、黒く淀んでいた。「人が死ぬって、きっとたまらなく寂しいだろうな…」祖母が死んだとき、今西はそう言って成幸を慰めてくれたのだった。幼い頃、一緒にザリガニを取ったり、斎藤を加えて神社の裏山で語り合ったりした思い出が、彼の悲しみに満ちた脳裏に去来した。学校をさぼって、一宮に映画を見た事もあった。夏祭りの宵、ビールで酔っ払った事もあった。作家になる事を志していた今西。それは音楽の道を志していた成幸とは方向は違ったが、二人はいつも仲の良い、そして最も親しい友達だった。「今西、どうして俺の背が、お前に追いつかないうちに死んだりしたんだ」成幸は心の中でつぶやいた。この悲しみは、親たちや斎藤にも、きっと判らないだろうと彼は思った。

ぼくときみ きみとぼく ぼくはぼくの道を行き きみはきみの道を行く

ぼくときみ きみとぼく それでもいいのさ

ぼくときみ きみとぼく 白い雲は 今日もふたりの上にある

 

成幸は、今西から贈られた詩の一節を口ずさんだ。「せめて今夜は、俺が一晩中側に付いていてやるぞ」成幸はまた、力なく今西に家に入って行くのだった。

第五章 高校時代 その6

「湖愁」

今西の突然の死は、成幸に大きな衝動を与えずにはおかなかった。

しばらくの間、彼はさすがに歌の練習まで、手が付かなかった。水色の少女の事も、その時は忘れた。人の死と言う事が、幼なかった頃に感じた祖母の死の時よりも、痛切に彼の中に響いた。何日間か、彼は家の中に引きこもって、ぼんやりとしていた。退屈すると、二階の窓から、下の道路を、行きかう人々を見つめていた。そんなある日、成幸の目に、突然あの水色の少女が映った。少女は自転車に乗っていた。少女は萩原銀座の方に、自転車を走らせているのだった。成幸は立ち上がった。あの少女と話せば、少しはこのうつろな哀しみが紛れるような気がしたのである。成幸は自転車を出した。階下のラジオが、どこか哀愁を帯びた、しかし軽やかな歌声を流していた。それは聞いた事のない曲だった。が、良い曲だな、と成幸は直感としてそう思った。

それが時へずして大ヒットとなった、松島アキラの「湖愁」であり、同時に成幸自身の運命に大きな影響を与える曲になるとは、まだその時には、知る由もなかった。