5月7日月曜日PM10:00、吉祥寺井の頭公園。
連勤疲れの退屈なGWが終わった。

こうやって時々私は夜ふらっと井の頭公園に一人でやって来ては、特に何をするわけでもなく時を過ごしたりするんだけど、こういうのはあんまりすすめないよ。

あれやこれやと余計な事を考える時間もたっぷりあるもんだから、色んなこと思い出してすごく寂しくなっちゃったりするから。

5年前の夏、ここで花火をしたことが思い出される。

あの人と自転車で二人乗りした事。
韓国製の花火を木にぶらさげて火をつけたら、爆発して本気で怖がった事。
お酒の飲めない君が、変に酔っ払ってサンダルを池に落とした事。

ちょっと前までは、思い出してはそういうものにすがりついていていたけれど。

そんなことを考えつつ、自分で勝手に指定席にしているベンチから立ち上がって、池の周りを反時計回りに歩き始めた。
すると、平行にニ岐に分かれた少しぬかるんだ小道のもう片方を、一人の男の子が歩いているのに気付いた。

同い年か、ひとつふたつ上か下くらいの年頃だった。
今風な格好をしているのに、煙たい感じがしなかったのは、よく似合っていた帽子と肩からかけられたカメラのせいだった。

その男の子は長身で、歩幅も私より広いはずなのになぜか私達はずっと一定の平行線を保ったままだった。

彼は時々立ち止まって月明かりに照らされた池を眺めていた。

何を想って何をしているんだろう

彼がどんな表情をしているのか気になった。

だけど見るのが恥ずかしくもあり、気付かれるか気付かれないかくらいの自然の動作を装って、視線の焦点を彼に合わせた。

一瞥した彼は、とても綺麗な顔をしていた。

それから、彼が平行線のあちら側で少し私を置いていったり私が彼を追い抜いたりしながら、池の弧を描いていった。

時折立ち止まり見つめる、少年のような瞳のその先に、何が映っているのだろう

だけど、彼はある処で立ち止まり、次第に視界から消えていった。

急に不安になって、ピントを必死に合わせたけど、彼は二度と私の被写体になることはなかった。

あれは一体何だったんだろ。


交わらなくていい、ただ離れたくなかった。
時々こちら側から手を振るから、それに応えてくれたらそれでよかった。

君と私は平行線

もう手を振っても見えないくらいに、二つの線は離れてしまったのかな。
離れた線が、どこかで巡りあっていつかキレイな環になればいいな。


帰りに、マクドナルドの前を通ったら中に居た男の人が見覚えのあるTシャツを着ていた。
いつだったか高円寺の古着屋で君が買ったうさんくさいニルヴァーナのTシャツ。

そんなこと思い出して何になるんだろ。
やんなっちゃうよ。


今が幸せかそうじゃないかって訊かれたら、間違いなく幸せだって答えるよ。