こんにちは、弁護士の松本常広です。
今回は、開業資金についてです。
弁護士というのはやろうと思えばパソコン、複合機、法律書等で最低限の業務が可能です。
そのため、開業資金は弁護士によって数万円~数千万円まで様々だと思います。
私の場合、居抜き物件を借りることになったとはいえ、事務所としての体裁を整えるために、ある程度の資金が必要でした(実際の開業時の費用については後日)。
また、開業資金を確保すれば良いというわけではなく、当面の運転資金も必要になります。
特に、地縁のない場所でゼロから仕事を開拓しようとしていた私の場合、数ヶ月単位で全く依頼が来ないという事態も想定しなければなりませんでした。
もちろん、生活費も必要です。
当時、預金は約150万円。
それに加えて、500円貯金で数年間貯めた現金が30万円弱。
(虎の子?の500円貯金)
ちなみに、当時既に借金が約500万円ありました。
奨学金です。
生活費分も含めた手持ちの資金は180万円弱……心許ない。
というわけで、借金をすることにしました。
約500万円の借金がある状態でのさらなる借入れは不安でした
が、自己資金が確保できない以上やむを得ません。
自己資金が貯まるまでイソ弁をやれば良かったのですが、個人的な事情で独立開業を急いでいました。
私が言うのもどうかと思いますが、前の事務所から顧客を連れて行けない、紹介や顧問先の当てもないという状態での独立開業の場合、自己資金は300万円はあった方が良いと思います、精神衛生上も。
さて、利用したのは日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
この融資制度の利点は、人的担保・物的担保が不要なところです。
また、返済開始まで半年間猶予があります。
一方、創業資金総額の3分の1以上の自己資金を確保しておく必要がありました。
さらに、審査を通しやすくするために総額の2分の1は用意しておいた方が良いという情報もありました。
余談ですが、この新創業融資制度、現在は自己資金要件が緩和されています。
創業資金総額の10分の1以上の自己資金で良いということになっています。
手持ちの現金30万円弱は生活費に充てるとして(明らかに少ない)、創業資金総額を300万円と設定し、150万円の融資を申し込むことにしました。
融資の審査は、必要書類を提出して面談を受けるというものでした。
右も左もわからない状況だったので、Amazon.comで創業融資関連の書籍を探し、対策しました。
提出書類のうち、厄介だったのが創業計画書です。
日本政策金融公庫のウェブサイトに複数の業種に関する創業計画書記入例が公開されていますが、士業についてはありません。
さらに、私は弁護士登録後ほとんどの期間を国会議員の秘書として過ごしたため、売上の見通しの根拠がいまいち分からなかったのです。
とはいえ、悩んでいても仕方ないので、友人に相談にのってもらいながら、
月●件程度新規の相談が来て
そのうち受任が●件程度で
一件当たりの単価が●円程度で
……と書いていきました。
また、公庫が用意している雛形を埋めるだけだと積極性が伝わらないと思い、このブログで書いてきたような立地の分析等をプレゼン資料としてまとめました。
(プレゼン資料、今読み返すと恥ずかしい)
面談は、融資の申込みから約10日後に行われました。
時間は1時間程度。
ここでは通帳もチェックされます。
自己資金として計上したお金が実は借入れではないか等を確認するためです。
面談では、主に以下の事項を質問されました。
・創業理由
・事業内容
・過去の経歴
・売上の見通し
・資金計画
・生活資金
緊張して臨みましたが、特に圧迫的な面談でもなく比較的和やかな雰囲気でした。
担当者に弁護士を面談したことがあるか尋ねたところ、少なくともその担当者は面談したことがないとのことでした。
面談から約1週間で審査通過の通知が届きました。
そして、融資の申込みから1ヶ月半程で150万円が振り込まれました。
2013年11月のことです。
返済は月3万円強を5年間。
奨学金の返済も月3万円強。
弁護士会費は月4万円弱。
固定で月10万円はなかなかの支出です。
兎にも角にも事務所(兼自宅)を借り、資金もできました。
さあ2013年中の開業に向けて気合を入れていこう、そう思っていたのですが……。
次回に続きます。
では、また。

