こんにちは、弁護士の松本常広です。
今回は、事務所の物件選びその3です。
前回のブログで候補物件を5つ挙げました。
かなり悩んだ末、最終的には物件①を選びました。
物件①
賃料 10万円
敷金等 礼金2ヶ月、敷金2ヶ月
広さ 10坪
階数 2階(3階建)
築年数 不明
状態 居抜き、床は板張り
形状 1LDK
エレベーター 無し
袖看板 無し(新設可)
駅から 徒歩30秒
備考 ユニットバス・トイレが付いており事務所兼自宅とすることも可能
1階は不動産業者、3階は住居
駅正面
定期借家2年(再開発が予定されているため)
飲み屋街入口に位置し、汚い、臭い
(大体の間取図)
今回はこの物件を選んだ理由を書いていきたいと思います。
■場所
駅の出口は東口と西口の二つです。
東口には商店街や飲み屋街が集中しているため、駅利用者の2/3~3/4が東口に集中しています。
物件①は、この東口の真正面に位置していました。
しかも、駅出口は地下改札からエスカレーター又は階段で上がるタイプなので、目線を上に向けていれば自然と物件①の袖看板スペースが目に入ります。
看板効果が極めて大きな物件といえました。
■広さ
開業マニュアル等には、事務所の広さは、弁護士一人当たり15坪程度必要とよく記載されています。
しかし、デッドスペースの少ない物件であれば、10坪程度でも問題ないように思います。
最初の開業場所も移転先もどちらも10坪程度ですが、支障をきたしたことはありません。
事務員を一人雇用したとしても余裕があります。
15坪というのは、しっかりしたエントランスを設け、かつ、事件記録等がかなり溜まった状態にも耐えうることを想定しているのではないかと思います。
ですが、そうすると開業当初は、スペースを持て余すことになります。
将来を見越して使っていないスペースに賃料を払という選択肢は、開業資金の少ない私にはありませんでした。
■賃料等
法律事務所の出費のかなりの比率を占めるのが賃料と人件費だと思います。
固定費なので削減が困難です。
また、敷金・保証金が高いと、開業資金が一気に減ります。
独立用の資金が潤沢ではなかったため、開業自体はできるだけ安く済ませて運転資金を手元に残し、固定費も極力低額に抑えたいと考えていました。
物件①は、賃料10万円・礼金敷金各賃料2か月分と居住用物件レベルでした。
しかも、ユニットバスが付いていたため、住んでしまえば居住用の賃料も抑えることができます。
なお、駅前の物件にもかかわらず家賃が安かったのは、再開発が予定されており、定期借家契約だったためです。
再開発予定地での開業というのは、普通は避けるべきです。
しかし、当時、色々と仮説は立てたものの本当に開業地に仕事があるのかわからない状況でした。
できるだけ賃料を抑え2年がんばって結果が出ないようなら撤退しよう、既存顧客には迷惑をかけないようにしつつ廃業しよう、後はコンビニバイト等をしながら少しずつ借金を返していこう、そう考えました。
■とはいえ……
以上の利点を考慮して物件①を選んだわけですが、100%満足して契約したわけではありません。
むしろ不安だらけでした。
まず、建物が古い……。
築年数が不明なため判然としませんが、おそらく戦後すぐに建てられて改築を重ねた物件のようでした。
床は薄い板張りでしたし、梁がデザインとか関係なく露出していました。
天井が低く、身長180㎝を超える人だと頭をぶつける場所がありました。
階段も暗く、初めて訪れる人は不安に感じるだろうと思いました。
古いためなのか、部屋から変な臭いもしていました。
飲み屋街の入り口に位置するため清潔とはいえず、騒がしい場所でした。
賃貸借契約後に様子を見に来た親族は、「法律事務所」に抱くイメージとの落差に絶句したそうです。
「あれはだめかもしれん」と周りに漏らしていたと後に聞きました。
「もっと普通のオフィスの方がいいんじゃないか?」
「一回契約したらもう後戻りはできないぞ」
「というか本当にこんな飲み屋街に住むの?」
等々何日も悩みました。
しかし、駅正面という好立地と、開業資金を敷金・礼金・賃料に持っていかれ、早期に運転資金が枯渇してしまうことへの恐怖が上回り、断腸の思いで契約しました。
2013年10月1日、当時31歳。
試行錯誤の末、ようやく独立開業に向けた一歩を踏み出しました。
では、また。




