弁護士の独立開業と物件選び① | 弁護士の独立開業 マチ弁モデルの再構築

こんにちは、弁護士の松本常広です。

今回は、事務所の物件選びについてです。

 

最近、レンタルオフィスでの開業が増えているそうです。

また、開業マニュアル等を読むと、初期投資が少ないということでマンションでの開業を評価しているものもあります。

 

これらについて、機能面でのメリット・デメリットに関してはある程度検証されているように思います。

しかし、物件選びのうえで重要なのは、対象顧客やその獲得方法、事務所の経営方針との関係だと私は考えています。

弁護士にとってどれほど便利でも、依頼者に来て頂けなければ事務所は継続できません。

 

「最初はマンションの一室ではじめて、仕事が増えてきたらオフィスビルに移れば良い」

このようなアドバイスが昔からよくあります。

ですが、「仕事が増えてきたら」の部分について、開業前に真剣に考える必要があります。

 

かつては、独立当初は国選事件や弁護士会での相談からの受任で生活し、少しずつ人脈を広げて売上げを増やしていくというモデルがありました。

ですが、23区内ではこのモデルは破綻しています。

 

「マンションの一室」やレンタルオフィスで開業するとして、どう顧客を呼び込むのか、そのイメージなしに事務所の種類を選択することは危険だと思います。

「仕事が増えてきたら」どころか、見込顧客に認知されなければ、ジリ貧で廃業に追い込まれてしまいます。

 

マンションやレンタルオフィスだと、ほとんどの場合、袖看板や壁面看板が出せません。

これは、見込顧客へのアプローチ方法を一つ捨てるということです。

 

袖看板や壁面看板というのは、目印になるのみならず、歩行者(潜在顧客)に事務所の存在を認知してもらう重要なツールです。

潜在顧客が法律問題を抱えた際、「あ、そういえばあそこに法律事務所あったな」と思ってもらえれば、他の事務所よりも一歩優位に立つことができます(AIDMA)。

 

(写真は現在の事務所です。開業場所とは異なりますが、そのあたりの事情も後日書きます)

 

私の事務所のように地域の方々から依頼を受けたい、と考えている場合、建物の外に看板が出せないというのは大きな損失です。

 

逆に、派閥や弁護団等から仕事を紹介してもらう、過去培ってきた人脈にアプローチしていく、ネット広告をバンバン打つ、ブログやSNSなどを積極活用してそこから依頼者を呼び込むといった方針であれば、事務所の種類はあまり影響がないかもしれません。

それでも、案内のしやすさ、顧客が受ける印象等は検討しておく必要があると思いますが。

 

今回は体験談というよりも、事務所選びの際の留意事項になってしまいました。

まだまだエラそうに発言できる立場にはありませんが、この点を強調しているマニュアル等があまり見当たらず、その一方で安易にレンタルオフィスやマンションでの開業を勧める言説をよく見かけるため、僭越ながら書かせていただきました。

次回は、体験談としての事務所選びについて書いていきたいと思います。

 

ではまた。