こんにちは、弁護士の松本常広です。
今回は、開業地を選んだ理由についてです。
前回、商圏人口として5~7万人程度が必要との仮説を立てたと書きましたが、その仮説に基づきいくつかのエリアを調べました。
都内全てをくまなく調査したというわけではなく、世田谷区、品川区、大田区、目黒区に絞りました。
23区内ということなら対人口比で弁護士数が最も少ない江戸川区などを調べるのが合理的なのですが、その辺りは弁護士業以外の理由です。
具体的な調査としては、1月8月の「法律事務所と立地①」で書いたとおり、まず各エリアの弁護士分布を調べました。
次に、空白地域の駅の乗降者数を調べ、人数が多いところをリストアップしていきました。
乗降者数は、Wikipediaで各駅名を検索すると大体把握できます。
そして、リストアップした駅を実際に訪れたりしながら、以下の要素を総合的に考慮してさらに絞り込みをかけました。
・ウェブサイトを持っている近隣の法律事務所との距離関係(競合)
・近隣の司法書士、行政書士事務所の有無(競合)
・バスの路線はどうなっているか(競合へのアクセス)
・人口(潜在顧客の把握)
・住民の年齢構成(潜在顧客の把握)
・他の士業などによる相続セミナー開催履歴(潜在顧客の把握)
・高層マンション、一軒家などの住宅事情(潜在顧客の把握)
・街の発展可能性(潜在顧客の把握)
・家賃相場(経費)
・事務所として適切そうな物件は豊富か(住民のアクセス容易性)
・幹線道路が街を分断していないか(住民のアクセス容易性)
・駅周辺の道は単純か、道案内しやすそうなシンボルはあるか(住民のアクセス容易性)
・坂の有無(住民のアクセス容易性)
・近隣に無料法律相談会をできそうな場所があるか(開業後の顧客へのアプローチ)
・歩行者、自転車の多さ(事務所看板の訴求力)
・住みやすそうか(職住近接)
・開業、開業後5年後のイメージが湧くか(直観)
・その街を好きになれそうか(直観)
大体2か月程かけて候補地を2つに絞りました。
最終的に選んだ駅の主なプラス・マイナス要素は以下のとおりです。
■プラス要素
・大きな商店街があり、歩行者が多い(事務所看板の訴求力、住民のアクセス容易性)
・再開発計画あり(発展可能性、立退き紛争多そう?)
・幹線道路から離れている(住民のアクセス容易性)
・坂が少ない(住民のアクセス容易性)
・駅前がロータリーを中心に整備されており構造が単純(住民のアクセス容易性)
・住民の年齢構成、一軒家比率のバランスが良い(潜在的顧客)
・スクエア荏原という大きな区民センターがある(開業後の顧客へのアプローチ)
・上記区民センターで過去複数回の相続セミナーが開かれている(潜在的顧客)
・区役所の支所がある(潜在的顧客)
・飲食店が多く独身者が住みやすい(職住近接)
・街が気に入った(直観)
■マイナス要素
・五反田、目黒といった法律事務所の多い駅が近い(競合、商圏が狭い)
・平成24年まで法務局目黒出張所が近隣にあったため司法書士事務所が一定数存在する(競合)
・品川区と目黒区の区境(広告が打ちにくい)
・家賃が比較的高い(経費)
マイナス要素の一つ目は無視できないウィークポイントでした。
徒歩圏としての優位性を維持できる(商圏)のが、1㎞圏内に限られてしまうためです。
そこで、駅を中心に、1㎞圏内の人口を調べました。
それが以下の表です。
前回のブログ同様、現在の人口も調べて掲載しています。
約66,000人で、仮に見込顧客の商圏外への流出可能性を70%と見積もっても、2万人弱を維持できます。
ちなみに、現在、開業準備時よりも人口は増えています。
減少が目立っているのは小山台2丁目と小山3丁目ですが、前者は公務員宿舎廃止に伴うもの、後者は大規模再開発中で一時的に住民が減っているためです。
今後、さらなる人口増が見込まれます。
ひとまず最大の問題点はクリアできました。
司法書士事務所については、広告を出している事務所がほとんどなかったのでそれ程問題視しなくても良いと考えました。
区境という問題点については、インターネット上の検索容易性の観点からは不安が残ったものの、高齢者向けの広告媒体として重要なタウンページについては、目黒区と品川区は一冊にまとまっていたため何とかなるのではないかと思いました。
家賃については、やや高いといっても、23区内である以上やむを得ないと妥協しました。
以上のようにある程度の問題点は解消され、何よりも街に魅力を感じたので、同地を開業地と定めて具体的な物件の選定に入りました。
ではまた。
