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現行犯を取り逃がした話をふたつ。
その１：
ある時、すし詰め状態の山手線の中で、痴漢を目撃した。中年男が若い女の子のスカートの中に手を突っ込んでいるではないか。わたしはその腕を掴んで引き離そうとした。でも、彼はものすごい力で止めようともしない。「やめなさいよ」と声をあげれば止めることができる。しかし、被害者の女の子は恥ずかしさのあまり、声をあげない。だから、わたしも沈黙のまま、睨み付けながら、腕を引っ張り続けた。次の駅に着いた。男は手をふりきって電車を降りていった。ああ、あの時、女の子が声をあげさえすれば、現行犯で捕まえることができたのに。残念。
その２：
ある日、「もしもし、オレ」と電話が入った。「だれ？」と私。「声が変だよ」と言ったら、「風邪を引いたんだ」と言う。でも、息子は今朝、元気に出かけて行ったはず。「だから、何？ 用事があるなら、早く言いなさいよ」とつっけんどんに言いはなってしまった。そうしたら、「冷てえな」と電話を切られた。ああ、あの時、親身な対応をして振り込みするふりをして、警察に通報していたら、現行犯で捕まえることができたのに。残念。
その後、リベンジしたく、振り込めサギの電話を待っているけれど、いっこうに電話が来ない。残念。