聖母マリアの夕べの祈り | 音を見つめる日々…

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東京カテドラル聖マリア大聖堂にモンテヴェルディの

Vespro『聖母マリアの夕べの祈り』を聴きに行く。

あいにくの雨でおまけにすごい寒さだったけど、カテドラルには

たくさんの聴衆が集まっていた。


チケットはヴェルレク静岡支部の座光寺さん(Ten)から購入。

座光寺さんは今日の合唱、ラ・ヴォーチェ・オルフィカのメンバー

でもある。


楽器は当時のヴェネツィアピッチ(今より約半音高い。Aが460~470Hz)

取り入れて古楽器を忠実に再現。

弦楽古楽器は今はもうそんなに珍しくないが、今日はコルネットやサック

ット(トランペットやトロンボーンの祖先)までもちゃんと揃っている。

へぇ~日本にもこんな楽器を演奏する人たちがいるのか。。。

テノールのソロに付けるキタローネ(ギターの長~いやつ)を期待した

けどそれは無かった。ハープで代用していたようだ。


それにしてもカテドラルに鳴り響いたモンテヴェルディのサウンド!

まさしく本場の香り。400年前の音が目の前によみがえる。

合唱の素晴らしさ、オーケストラ、アントネッロの古楽アンサンブルの

見事さ、ソリストの声の美しさ、どれを取っても一級品!

不安な要素が一つもない。


声楽陣のルネサンス期の歌い回しの見事さには本当に舌を巻いた。

よっぽど長く現場にいないとこれだけの唱法は身に付かないと思った。

顔は日本人でも響きはヨーロッパそのものである。

優秀な古楽奏者たちと完璧な古楽唱法の融合。

幸せな出会いだ。


テノールソロの方がやったグレゴリオ聖歌の指揮、うまい。。。

なるほどああゆう風にやるのか。


指揮の濱田さんはリコーダーとコルネットの名手だが、指揮も素晴らしい。

変に構えず格式張らず、思いのままに情熱がほとばしるように指揮する。

音楽にひたむきで余計なことを一切やらない。

当たり前なのだがこれが実は難しい。

あと、宗教的で敬虔な姿勢も音楽にちゃんと内在している。

(激しい指揮の直後にリコーダーやコルネットを見事に吹くのだが、

これはすごい。僕がやったら息が切れて絶対無理)

結果、カテドラルの空間にモンテヴェルディの音楽が自由に飛翔している。

エネルギッシュで野心的なVesproの音楽に実にふさわしい響き!

カテドラルの空間が喜んでいるのが分かる♪

そうそう、演奏に味方している何かがいるこの感じ。

久しぶりの体験だ。

なにか従来の演奏法にとらわれていない自由さがすごく面白い。


演奏中、奏者が入れ替わり立ち替わり移動するのも興味深かった

ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂にはバルコニーがあって、演奏者や

聖歌隊はそこで演奏したのではと言われているが、モンテヴェルディの明らか

聴衆を意識したあの手この手の演奏手法がここでも聴きとれて非常に楽し

かった。

この曲はルネサンスからバロックへの橋渡しみたいな立場に位置している

が、モンテヴェルディはよくこのような世俗曲みたいな音楽を教会音楽に

取り入れたものだと思う。

おごそかな教会にマドリガルのように鳴り響く華麗な音楽に思わずニヤリと

してしまう。


私はガーディナーがサン・マルコ大聖堂で演奏したライヴのDVDを見たことが

あるけど、(それも素晴らしいけど)生で聴く方がずっと印象深かった。


1600年代にタイムスリップしたような幸せな2時間。。。

エネルギーをたくさん与えられた。

モンテヴェルディはまさに生きていると実感させられた。

素晴らしい!感謝!


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▲Ⅱ部開始前の指揮者の挨拶


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▲座光寺さんカメラ目線??