悪魔の事件から | 内山正則の『ココロ残し』

内山正則の『ココロ残し』

 いろんなことを忘れないために。
 離れてゆくものを、繋いでいたくて。
 消えてゆくものを、残していたくて。
 変わってゆくものを、見つめていたくて。
 霞んでゆくものを、無くしたくなくて。
 ぼくがボクを思い出す場所でありたい。

悪魔のような事件から、

悪夢のような悲劇から、

地下鉄サリン事件から、明日で15年が経つらしい。
当時の僕はまだ小学生だったけど、さすがにこの事件はインパクトがあった。
あの頃は“たくさん犠牲者の出た大変な事件”という程度の認識で、
東京という離れた場所にも、地下鉄というものにも馴染みがなく、どこか遠い国での出来事みたいに捉えてた。

今こうしてこの街に住み、毎日のように利用する電車、鉄道。

目の当たりにしてみると事の凄惨さがひどく身近に感じる。
1日何十万人が利用し、行き交うこの場所で、猛毒をばらまき人殺しを企てたなんて。


去年僕がやったお芝居で、「人はなぜ人を殺すのか」「死刑制度に賛成か反対か」といったことをテーマに掲げた、非常に重い問いに向き合う舞台があった。

すでに死刑執行が確定している麻原被告のような人物に関してのみ言及すれば、死刑制度に賛成したい気持ちもあるけれど。

『死刑』と『殺人』との線引きは非常に微妙なラインだろう。


「人はなぜ人を殺すのか」その答えは迂闊には出せそうにないけれど、
「人は人を殺してはいけない」ということくらいは、人類が共有する答えとして
誰もに共通する概念として
持っていたいと思う。