神奈川近代文学館の「井伏鱒二展」に、娘夫婦の案内で、老妻と行って来ました。またこのブログで印象に残ったことを報告したいと思っていますが、今日は、先日の「井伏鱒二についての忘れ物1」の「あとがき」です。

 

 先日、引用した「現代の作家」(岩波新書)の中で気になったのは、「森政の実兄が鷗外の手紙をほしいという」という部分です。既に死後の全集(以下「新全集」と呼ぶことにします)に森政保(兄)という表記も見えていますが、森政の兄が鷗外の手紙を欲しがったというのであれば、あるいは傍線部分「この二通の手紙は、いま亀山の人が持っているそうだ。竹下君という人から聞いた」も「森政の兄」と関係があるかもしれない、あるいは、他の人名が出てくるかもと思い、一九五二(昭和二十七)年九月十日発行『文学』(岩波書店)第二十巻第九号(九月号)「作家に聴く」第九回として「井伏鱒二」の標題で発表のものを取り寄せて見ました。その結果、それには、「この二通の手紙は、いま龜山の廣瀬という人が持っているそうだ」とありました。「廣瀬」という人が井伏とどんな関係があるかわからないままに、一応ここに書き留めておきます。