今朝もまた、大騒ぎ。地方新聞である「中国新聞」の、1面と26面に井伏鱒二の書簡のニュースが出ていました。

 

 見出しは、「薬物中毒の太宰『だまされて入院』被害意識代表作に結実」「病状が記す井伏書簡」といったものでした。

 

 今度見つかったのは、井伏鱒二の佐藤春夫あての書簡なのに、「毎日新聞」も「中国新聞」も、まったく「太宰治中心の記事」に、多少呆れ、老妻と「なんでこんな書簡が大きく書かれるのだろう?」などと話し合ったのですが。

 

 ともかく、地方新聞である「中国新聞」の1面コラム「天風録」は、そうお目にかかれないし、面白い書き方なので、面倒ではありますが、全文引用しておきます。

 

 1935年の第1回芥川賞で、選考の輪にいた川端康成は落選作の一編を選評でとがめる。<作者目下の生活に厭な雲ありて‥・>。私生活をそしられた本人は「刺す」「大悪党だと思った」と先輩作家を逆恨みする▲無頼派作家に数えられた太宰治ともなれば、悪口雑言も芸の内かも知れない。とはいえ自意識過剰で、妻子持ちでありながら色恋にふけるわ、心中騒ぎを繰り返すわ。目に余る<厭な雲>はその後も消えなかった▲21世紀の今なら、スキャンダル報道の餌食だろう。幾つもの暗い雲が垂れ込め続けた太宰。心模様を探る新たな糸口が東京で見つかった。文学の師で福山市出身の井伏鱒二が、薬物中毒で入院した太宰の様子を伝える書簡である。▲方言交じりで、「私たちが太宰をだまして入院さしたと憤慨している」。信頼を寄せていた井伏に「裏切られた」との太宰の思い込みがうかがえる。精神科治療への誤解や偏見も強かった昭和の頃である。屈辱感、被害者意識にさいなまれたのだろう▲そんな悪感情が小説のタネになるのだから面白い。代表作「人間失格」の核心だと研究者はみる。書簡の文面をいつか、福山市のふくやま文学館で拝見したくなる。

 

 見つかったのは、井伏鱒二から佐藤春夫宛ての書状七通ですよ。それの報告をこんな書き方で紹介しているのは、なぜ、というのが、朝のコーヒータイムの老妻との話題でした。そして、最後のまとめがいいですね。ふくやま文学館どのぜひとも、この書簡を早く読ませて下さい。