もう60年以上も昔のことになりますが、広島県の高校を出て、仙台の大学に進学しました。

 

 その第一日目、大学の紹介してくれた下宿で、広島から送った荷物を開くのを手伝ってくれていたその家の主人が、そばにいた息子に「デンチュウ買ってがい」と言いました。

 

 荷物の中から丸い傘の金属製の古い電気スタンドが出てきたのですが、「電球」が入ってなかったのです。

 

 それにしても、「電柱」を買ってこいとはなんてことと一瞬あきれ、そして、改めて、遠い国にきたのだということを実感致しました。

 

 その日の夜、近所の婦人が「おばんです」と声をかけて、その下宿に来たこともあわせて私にとって印象的な出来事でした。

 

 こんな昔話を思い出したのも、今夜、夕食を取りながら、「プレバト」という番組をぼんやり見ていたからです。

 

 俳句の先生が、その添削で、「電球」と言ったのではないかという私に対して、そんなことは言ってないよという家人たち。いずれにしてもいい加減にしか視聴していなかったのですが、その後この「電球」が気になって、机上の辞書を引いてみました。

 

① 「三省堂国語辞典」第7版

 でんきゅう 〔電球〕 〈名〉 電灯のガラスだま。「―が切れる〔=中のフィラメントが切れる〕

② 「明鏡国語辞典」第2版

 でんきゅう 【電球】 〈名〉 不活性ガスを封入したガラス球の中に、電流を通すと発光するフィラメントを入れた照明器具。白熱電球。電気の球。「裸―」

③ 「広辞苑」第7版

 でんきゅう 【電球】 発光体をガラス球に封入した照明用の電気器具の総称。白熱電球・水銀灯・LED電球など。

 

 日本語は難しいですね。「私の部屋には『電球』なんかないよ」と言って、「プレバト」の添削に文句をつけようと思っていたのですが、「LED電球」などの用法があれば、「うーん」とうなってしまいました。だがやはり丸くない「電球」には、多少の違和感がありますね。

 

【追記ー訂正】 このブログの「デンチュウ買ってがい」という、下宿の主人の息子に対する言葉について、宮城県生まれの老妻からクレームがつきました。「『デンチュウ』と『キ』と『チ』の言い換えは当然として、『買ってがい』と父親が息子に言うことはありません。『がい』はある意味での『丁寧語』だからです」という指摘でした。私の勝手な記憶違いでしたので、「デンチュウ買って来い」と訂正します。