長い間、このブログを書けなかったので、今日は朝から何とかこの前のブログの続きを書きたいと覚悟をきめました。

 

 文春新書版『超明解!国語辞典』自体、決して悪い本ではありません。ただ、どうしても納得できないのが、目の前に『明鏡国語辞典』第2版(2010年12月1日発行)があるのに、『明鏡国語辞典』初版(2002年12月1日発行)を「辞書比較の対象」に取り上げたかということでした。

 

 それによって、この『超明解』の内容がどう変わるかを以下に簡単に気がつく範囲で列記しておきます。

 

1 『明鏡』の「編者のことば」は一ページ半ほどしかなく、あっさりしている。(『超明解』79頁より)

 「初版」の「編者のことば」は、二十七行であるのに、「二版」の「編者のことば」は三十九行である。

2 『明鏡』の「見出し項目数」を「頁数」で示すと、

 「初版」→1784頁、「二版」→1886頁

 

 このように異なるのに、「初版」を他書との比較材料に使うと、問題のある箇所がいくつでも見つかります。

3 〔カタカナ語に対応しているかどうか〕 『超明解!』118頁

 カタカナ語100語を取り上げて、「見出し項目」にあるかどうかを比較しています。

 『明鏡』初版の総計は「57個」となっていますが、二版では「65個」に増しています。

4 〔オノマトペと用例〕 『超明解!』208頁

 「スルリト」の初版には「見出し項目なし」(同書212頁)とありますが、二版では「見出し項目」に上がっています。

5 〔『広辞苑』をつかって森鷗外の作品を読む〕『超明解!』234頁

 『舞姫』中の漢語二十語を取り上げて、『広辞苑』を中心に見出しの項目の「辞書比較」を行っていますが、『明鏡』初版では「五個」であるのに対して、二版には、「十三語」が取り上げてあります。

 そして、こんなことも書いています。

 

 ーここより引用ー(『超明解!』239頁)

 「新明解」と「明鏡」との違いは「ビヨウ(微恙)」を見出し項目とするかどうかである。といっても、それほどはっきりしたことがいえるわけではない。ただし、「ビヨウ(微恙)」が現在でもいくらか使うかもしれない漢語であるとすれば、「明鏡」はそのあたりをはずして、語を収斂させていることになるし、(以下略)

 ーここまで引用ー

 

 勿論、『明鏡』初版には「びよう(微恙)」は見出し項目になっていませんでした、が、二版には、ちゃんと立項され、語釈も「軽い病気」と加えられています。

 私のような、第二版を目の前においている読者にとって、『超明解!』はまったく時代錯誤のトンチンカンな説明にしか過ぎないわけです。

 

 先日、文藝春秋社の「文春新書」担当に電話したところ、「この『超明解!』の内容に「嘘」があるわけではないでしょう」と答えられ、いささか唖然としました。確かに「嘘」を書いているわけではありません。ちゃんと「初版」を「根拠」に書いているのだから。しかし、読者にとって、この「辞書比較」はある意味、「欺瞞」行為ではありませんかと伝えておきました。