「辞書比較」がどんなに難しいことか。昨日まで、『超明解!国語辞典』という、他の部分ではよく出来ているのに、肝心の「辞書比較」のために選んだ辞書に問題があり、それが「悪書」にしているということを書きました。
その仮定で、大修館版『明鏡国語辞典』第二版(2010)が、『舞姫』や、『山月記』など、高等学校の国語教科書の訂版作品の内、特に漢語を多く含むものにかなり焦点をあてて、編集しているということを書きました。
実は、『山月記』のことを書かなかったので、ぜひ、書いておけという話があるので、今日はそれを少しだけ書いておきます。
すべてで、『超明解!』と同じく二十語を採り上げたのですが、すべてを書いてもいみがないから、その内の特徴的な六語だけを『明鏡国語辞典』第二版と『広辞苑』第七版とで比較しておきます。
「×」は立項されず。 △は語釈のみ、用例はなし。○は用例があるが、出典なし。◎は「中島敦」と明記。
明鏡 広辞苑
才穎 ○ ×
狷介 ◎ ○
峭刻 ◎ ×
登第 ◎ △
狂悖 ◎ ◎
記誦 ◎ △
【注】『広辞苑』の「狂悖」の出典は、「中島敦」ではなく、「満州日日新聞1935年11月19日より」です。
私は「大修館」の回し者でも、ステマでもありません。ただ、大修館版『明鏡国語辞典第二版』から、高校の『舞姫』や『山月記』に出てくる「漢語」について、出来るだけ立項したいという意志を読み取ることは出来ると思います。
だから、この「辞典」がすぐれていると言っているつもりはありません。ただ、「辞書比較」の対象となる「辞書」の選択をいい加減にすると、とんでもない「悪書」になり、説得力がなくなることを出版社にお願いしているだけです。
そして、こんな本(『超明解!国語辞典』)は出来るだけ早く回収、そして、絶版にすべきだと出版社にお願いするのですが、願いはなかなかかないません。書店の棚に置かれているのを見る度に、それでも売れるのかという複雑な心境に襲われるという話でした。