稀勢の里の昇進を素直に喜んでいます。

 

 千秋楽の前日、老妻と明日の白鵬戦、勝つと思うか、話し合いました。

 

 「白鳳は全力で戦うよ。そして敗れるよ。相撲ってそんなもの」

 

 決まり手まで、予想したのですが、それはそれとして。

 

 勝負の世界で、よく、「木鶏(もっけい)」という言葉が使われます。

 

 もっけい【木鶏】 [荘子(達生)]木製のにわとり。強さを外に表さない最強の闘鶏をたとえる。(『広辞苑』第六版より)

 

 相撲の世界では、例の双葉山が、1939年、69連勝後、安藝ノ海に敗れ、インド洋上にいた安岡正篤に「ワレイマダモッケイタリエズ フタバヤマ」と電報を打ったという有名な話。また、白鵬が63連勝で終わったとき、「いまだ木鶏たりえず、だな」とつぶやいた話(2010年)。

 

 今年は酉年。酉は鶏のことだそうです。

 

 当然、人間が木鶏たり得ることはありません。「われ、木鶏たり得ず」という言葉をはけるような横綱に育ってほしいと願う次第です。

 

 聞けば、入門後、休んだのは一場所だけとか。

 

 「無事これ名馬」は菊池寛の言葉。

 

 稀勢の里は名馬の資格十分です。

 

 師匠「隆の里」のような、愚直な横綱を全うしてくれることを期待しています。

 

 【追記】 紀消子(きしょうし)という者が王のために闘鶏を養成した。十日たったときに王が尋ねた。「鶏はもう使えそうか。」紀消子は答えた。「まだです。今は、やたらに強がって気負っています。」十日たってまた王が尋ねた。すると(消子は)答えた。「まだです。まだ物音や物影に対して身構えてしまいます。」十日たってまた(王が)尋ねた。すると、(消子は)答えた。「まだです。(他の鶏を)にらみつけていきりたちます。」十日たってまた(王が)尋ねた。すると(消子)は答えた。「完璧です。他の鶏が鳴き声を立てても、もはや何も反応しません。遠目には木で作った鶏のようです。その(無為自然なる)徳は完全に備わっています。(こうなっては)他の鶏で立ち向かおうとするものはなく、背を向けて逃げ出すでしょう。」(『荘子 達生』)