旧年、12月31日の毎日新聞「余録」は、過ぎ去ったその年の出来事を「いろはカルタ」にして掲載いたします。

 

 「五輪に沸き、米欧が激動した2016年。いろはカルタで振り返る。」と枕にあって。

 

 【い】伊調快調 以下、【京】きょうからみんながオンリーワン までの48字をカルタにしたものですが、わが老夫婦もいつも通り、コーヒーを飲みながらの話題にしました。

 

 老妻 「今年のカルタでわからないのが二つ。一つは、【り】両さんお疲れさん、そしてもう一つが【め】夫婦(めおと)ファジー。

 

 私 「『両さん』っていうの、『オバマと朴槿恵両大統領にご苦労さん』と言っているのだろう。

 

 老妻 【を】折り鶴に非核誓った大統領とか、【あ】あまり口利きしなかった? というのが他にあるから、その答えはどうでしょうか。

 

 そこで、思い出したのが、わが仇敵、『文藝春秋』12月号にあった、「菊池寛賞発表」の記事、ラサール石井の感想「日本の宝」。「秋本先生おめでとうございます!私はアニメや舞台で両津勘吉を演じさせていただきましたことを、とても誇らしく感じています。(以下略)」

 「そうだ、『両さん』とは、漫画の主人公のことだよ。ちょっと待って。ネットで調べるから。」

 1976年に連載を開始した秋本治の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が完結した、その主人公が『両さん』だったということを確認して一つが解決。

 もう一つの【め】 夫婦ファジー は、ノーベル賞受賞された大隅良典さんの『オートファジーの研究』と、その奥さんとの関係を『良いかげんな夫婦関係』と発言したことをかけて、『夫婦ファジー』と読んだのだろう、ということで決着しました。

 

 私の仕事はもう一つ、『ファジー』は『国語辞典』にいつ頃から立項されているかということになりますが、びっくりしたのは、私の持っている辞書でもっとも早く立項しているのは岩波書店版『広辞苑』第四版(1991年11月)だったことです。

 

 そこには、こうありました。

ファジー【Fuzzy】 (けばのような、の意)人間の知覚・感情・判断に伴う曖昧さ。

 

 1980年代の後半にしきりに使われた単語で、たまたま、その時期に新しい版が出たというに過ぎなかったことでしょうが、新語に強い『三省堂国語辞典』を出し抜いて、『広辞苑』がこんなに早く立項していることに驚いた次第です。(私の持っているわずかな辞書の比較に過ぎません。もし他の情報があれば、ぜひコメントを下さい)