私は商売柄、多くの国語辞典を使いますが、まず初めに引くのはほとんど大修館版『明鏡国語辞典』第二版です。それが他の辞書より勝れているというのではなく、何となく引きやすいということでしょうか。初版もすぐ手に取れ、比較が簡単というのもその理由です。(引き比べの好きな私にとって『三国』や『新明解』など、七冊を引き比べたりしなければならないのですから。)

 この『明鏡』第二版に「別冊」がついていることに、うかつにも最近気がつきました。95頁の薄いものだから、本棚に紛れ込んでいたのです。

 その別冊の表題はこうでした。

 北原保雄編「明鏡国語辞典第二版」別冊 『明鏡 問題ことば索引』 大修館書店

 「この問題な」の「な」が、次に続く「ことば」とは異なり、多少斜体で書かれていました。

 本文は、三部に分かれ、1 誤用索引  2 敬語索引  3 気になることば索引 でした。

 そして、この「問題な」という例を懸命に探しましたが、その別冊中に見つけることが出来ませんでした。

 次はいつものごとく、『明鏡』編集部への電話です。

 ① この別冊では一切説明されていません
 ➁ 「問題な」の「な」の斜体は、この語の使い方に問題があるので、遊び心で斜体にしました
 ③ くわしくは、辞書の本体で、「な」を見てください

 以上が「明鏡編集部」の可愛い声の女の子の返事でした。

 早速、第二版を引いたところ、初版に全くなかった説明が加えられていました。

 関係する部分だけ引用します。

 ーここから引用ー

 「な」の種類と用法
 ▼体言の前に使われるもの
 名詞や副詞の後ろに使われるもの。「…の」や「…である」を用いるところを「…な」で言うもの。本来は使われなかったものが徐々に増えている。「△問題な日本語(○問題の/問題である日本語)」「△突然な訪問(○突然の訪問)「拠出金が最大なことが判明した(最大であることが)」⇒変な「な」の付け方

 変な「な」の付け方
 ▼<「もの・こと>をあらわす語に「な」を付ける
 [×]…科学なイベント・学生な・考え・日本な人
 ▼<もの・こと>だけでなく<状態・感情>も表す語に「な」を付ける(「の」の方が標準的)。
 [×または△]…異例な試み、いつも薄着な人(中略)日本式なやり方・悲運な死を遂げる・,問題な日本語・洋風な建物

 ーここまで引用ー

 結論的に言えば、「問題なことば」は「変な『な』の使い方であるが、△で、徐々に増えている」ということだと判断しました。

 「どう?こんな日本語」と朝食の時、老妻と話しながら、新聞を見て驚きました。

 2016年1月18日(月)の「毎日新聞」一面下部、書籍の広告欄に次の書名を発見しました。宣伝するつもりはないので、書名だけ紹介します。

 「感謝な心

 ついでに、翌1月19日(火)の同じ欄にありました。

 「珍奇な体験

 「こちらは、まともな日本語でしょうか、それにしても『珍奇な体験』をよくしますね」というのが老夫婦の感想です。