去る10月中旬より、新聞記事に「傘寿(満八十歳の祝い)」という言葉が、しばしば出ました。

 天皇皇后両陛下が、「傘寿」を迎えられまして、新聞がその記事を書いたせいです。お二人が、「傘寿」であられるのは、もう数日間ということになりましょうか。

 それにしても、この「傘寿」ということば、よく使われるようになりました。

 初出はおそらく、『新明解』国語辞典』初版 1972(昭和47)年です。

 さんじゅ【傘寿】 [傘(カラカサ)の略字「仐」が八十と読めることから]八十歳(の祝い)。
 (『新明解国語辞典』初版 1972(昭和47)年1月)

 これを立項した基になるのは、見坊豪紀のカードに間違いないのですが(このブログでこの経緯については既に書きました)、それがどう書かれているか再出します。

 ーここより引用ー

  この〝傘寿〟ということばは、俳句界ではよく使うことばらしく、全七例のうち六例までが俳句関係である。
 次のような俳句もある。
    天われに傘寿(さんじゅ)をたまふ菊供養
    (「文藝春秋」一九六四年一二月号67頁「風物秋冬」富安風生)

(見坊豪紀 『暮ししと健康』1982年6月号より)
 
 ーここまで引用ー

 富安風生は、生年1885年4月生まれ、まさしくこの年「傘寿」であり、そしてこの句により、その「傘寿」という語の存在は確認出来たと言えるでしょう。

 この「傘寿」は他にも用例があり、そのまま、「見坊カード」に記録され、次に『新明解』の編纂者である、山田忠雄に貸与、そのまま、『新明解』初版に立項されたと考えられます。

 ついでに書けば、勿論、その『新明解』直後に出版された『三国』二版にも立項されるわけですが、この二つの辞書の基になる「見坊カード」には、「傘(からかさ)寿」とルビが振ってありました。そのため、この二つの辞書は、その当時(昭和40年ごろ)の言い方そのまま「傘(からかさ)」と「語釈」をしましたが、後、「からかさ」という言い方は廃れてきます。
 『三国』はすぐさま「傘(かさ)」と書き変えますが、『新明解』は現在まで、「傘(からかさ)」と語釈しています。言葉の変化に敏感な『三国』と、保守的な『新明解』の違いの極端なあらわれでしょうか。

 「閑話休題」

 「傘寿」の存在は、1964(昭和39)年までさかのぼることが出来ました。では、「卒寿」はどうかというのが変わらない疑問です。

 以下、明日書きます。