さっきまで、テレビで、歌声喫茶の合唱を聴き、涙を流していました。「泣けて、泣けて!」

 「一杯飲んでいるからですよ」と老妻はなじりますが、ブログを書く時は泣いてはいません。ただ、飲まないと書けない、これは、ここまでいつもです。千回を超えましたが、すべて、酔っ払ったあげくのブログです。

 何を飲んでいるか、また、どんな酒がいいかなど、本人はうるさいですよ。しかし、「学びのブログ」だから書きません。

 「腑に落ちない」という句があります。「納得いかない、合点がいかない」という意味の句です。

 これの肯定形「腑に落ちる」はどの程度認知されているのでしょうか。

 「腑に落ちる」を立項しているのは、『日本国語大辞典』だけです。さすがに用例を挙げています。

 ○ 四ヶ月も経てば、学校の様子も大略(おほかた)腑(ふ)に落ちて、僕も先づ関西学院生となり了(すま)したのであつた。(徳冨蘆花『思出の記』五の巻㈡より)

 しかし、他の辞書では立項されていません。

 『三国』でも、「腑に落ちない」と立項し、肯定形は「腑に落ちる」と注しているに過ぎません。

 机上に置いた、『明鏡国語辞典』第二版はそれでも多少親切です。

 ふ【腑】 (省略)
  腑に落ちな・い  納得がいかない。「不合格なのは―」
 [語法]否定の意で使うのが伝統的だが、近年は「腑に落ちる」の形で納得がいく意で使うこともある。

 用例を示してくれれば、納得(腑に落ちる)するのですが、用例はありません。

 ところが、今日の毎日新聞の朝刊で次のような例を見出だしました。(2104・10・28)

 『狂喜の読み屋』 都甲幸治さんのインタビュー記事です。

 また戌井昭人さんの小説について<現代の読者の無意識に入り込み、こっそりと記憶を書き換えて、世界の見え方までも変えてしまう>。「とっさの時に人間がバカなことをしてしまうところばっかり書いている。それがヘンに腑に落ちる。天台ですよ。」(以上すべて、太字は稿者注)

 この「腑に落ちる」というカードはいっぱいあるでしょう。しかし、私には新鮮でした。「腑に落ちる」なんて、考えもしない老人としては。

 それにしても、こんなカードよりも、「うまい酒は何か?」などということを、いつかは書いてみたいものですね。