猛烈な雨で授業なし、図書室で『文藝春秋』9月号を開
いていて、「人声天語」ー「猛烈な暑さ」の中で「猛烈」とい
う言葉を考える という坪内祐三さんの文章を読みました。
「『猛烈な暑さ』という表現は私のオリジナルではなく、テ
レビのニュースなどで使われている表現だ。
皆さんはこの言葉を普通に聞き流せるだろうか?
私は違和感をおぼえる。」
私には違和感がありません。
どうも、言葉の感覚がおかしいらしいとこのことを老妻
に伝えました。
実は先週、8月29日、また、例の「なぜ、コレコレを飲
んでいますか?」という広告が地方新聞に大きく出まし
た。この度は女性三人ではなく、男性二人と女性一人と
いうパターンです。
朝食の時、老妻に、「なかなか話がわからないね、抗議
しようか」と話したところ、老妻が前日の毎日新聞を持ち
出し、私に示しました。
「広辞苑『那智黒は和歌山産』」という見出しの文でした。
少し引用します。
「広辞苑が黒色の硬質な粘板岩『那智黒(なちぐろ)』に
ついて、三重県熊野市産にもかかわらず、『和歌山県那
智地方に産出』と、誤った記述をしていることが熊野市へ
の取材で分かった。市によると、那智黒は碁石やすずり
の原料として知られ、これまでに那智地方で採掘された
ことはないという。岩波書店(東京都)の広辞苑編集部は
『次回の改訂版では、専門家の意見を聞きながら修正を
含め検討したい』としている。」
その後に次のような記述があります。
「熊野市が1997年ごろ、広辞苑など184種類の辞書
や事典を調べたところ、38種類で誤りが見つかり、出版
各社に文書で申し入れていた。」
この記事によると、熊野市は既に、1997年に『広辞苑』
に訂正を申し入れていたようです。
『広辞苑』の改訂は次のように行われています。
1991年11月15日 第四版 第一刷発行
1998年11月11日 第五版 第一刷発行
2008年 1月11日 第六版 第一刷発行
すなわち、熊野市からの申し入れは、第五版の前に行わ
れたにもかかわらず、訂正もなく、第六版も無視、現在まで
来ているということです。
『広辞苑』第六版の「那智黒(なちぐろ)」の記述を次に書
いておきます。
「なちぐろ[那智黒](和歌山県那智地方に産出したからい
う)黒色の特に硬質な粘板岩。試金石・碁石・硯石に用い、
浜の小石は庭の敷砂利とした。那智石。(以下略)」
「和歌山県」と「三重県」では大違いでしょう。しかも、誤り
としての申し入れがありながら、すでに十五年以上を経過
しています。「これはひどいや」というのが率直は感想です。
老妻の、「世の中、あなたの考えているほど甘いものでは
ありませんよ。物事を変えるというのは大変なことですよ」と
いう厳しい指摘でした。
参りました。
この世の中、「無理題」に充ち満ちているということを忘れ
ていました。