喜寿の会で話した一つの思い出です。


 新制高校1年の秋でした。そろそろ寒くなってきたので、ジャンパーを制服の上に羽織っる生徒が増えました。


 或朝、ホームルームの時、担任であった英語のM先生が、「明日からジャンパーを着てくることを禁止する」とおっしゃいました。


 ところが、前から、三列目に座っていた、S君が大きな声で、「マッカーサーも着てる」と発言しました。


 M先生は、しばらくS君をじっと見つめておられましたが、つかつかと、壇をを下りて、右手の親指と中指で輪を作って、S君の頭を二三度弾かれました。


 これは、M先生が困ったときになさる、「お前の頭は空っぽの音がするよ」という仕草でした。


 みんな爆笑。その結果どうなったかはっきりしませんが、その冬は無事ジャンパーを着て過ごしたように覚えています。


 マッカーサーはそれほど偉かったのです。


 呉の軍政部が県教委に、一年遅れて「男女共学、総合制、小学区制」を指示、県教委がそれに従ったがために、広島県、あるいは中国地方の高校は一年遅れで新制高校となり、そして、日本全体の復古調とともに、たった四年でまたあえなく消え去ったわけです。


 しかし、楽しい高校生活だったことは間違いありません。何しろ五日制ですから。他にすることのない時代です。クラブ活動に全力投球した生徒が殆どでした。