はじめに読んで解こうとしてびっくりしました。まったく驚くような問題だったのです。そこで、早大の国際教養学部の入試係に手紙を書きました。


 1 正解を教えてください。

 2 出題者は、私の無理題だという指摘をどう思いますか。


 まだ、返事は参りませんが、私の考える「大学入試古文の無理題」の一つの例ですので、今日から何回かに分けて一緒に読みたいと思います。実は、全体が短編小説のような味もあるので楽しめるかもしれません。


【本文】 

 次の文章は『増鏡』にある亀山上皇出家の際の話である。よく読んで後の問いに答えよ。 

 中務の宮の御むすめは、もとよりいとあざやかならぬ御覚えなりしかば、世を捨てさせ給ふきはとても、とりわきたる御名残もなかるべし。禅林寺の上の院の、人はなれたる方に据ゑ聞えさせ給へれば、ことにふれて、いとさびしく心細き御有様なるを、おのづから言とひ聞ゆる人もなし。

【解説】これは私が勝手に説明するものです。

 「中務の宮の御むすめ」=宗尊親王の御娘倫子

 「御覚え」=ご寵愛ぶり

 「世を捨つ」=出家する

【口訳】

 中務卿宗尊親王の御娘倫子女王は、もともとからあまりめでたくもない(亀山院の)ご寵愛であったので、院が御出家なさる時といっても、格別御名残おしいということもないのであろう。禅林寺の中の、上のほうにある院で、人気(ひとけ)の乏しい方にお住ませ申されたので、(女王は)何かにつけてたいそう寂しく心細い御様子であるのに、たまさかにも訪問申す人もいまい。

【検証】

 明日、検証しますが、この文章の中に、口語訳する場合、二つの訳が可能な箇所が一箇所あります(無理題の種です)。それはどこかわかりますか。