受験シーズンです。大学入試の出題ミスが連日報道されています。

 私は「国語」の教師です。関心があります。しかし、「国語」に関する出題ミスはほとんど報告されません。ところが、2010年2月4日「毎日新聞」朝刊で、「神戸松蔭女学院も」という見出しで、「国語」の出題ミスが報ぜられました。


 「神戸松蔭女子学院大(神戸市灘区)は3日、1月27日に実施した一般入試(A日程)の国語で、出題ミスがあったと発表した。この問題については受験者203人全員を、正解とし、5日発表の合否には影響はないという。

 問題は、『キ範』のカタカナ部分と同じ漢字を含む熟語を選択肢から一つ選ばせるものだったが、正答が二つあった。」


 私は問題を見ていません。しかし、典型的な「無理題」の問題だと思われるので、的はずれの恐れをも顧みず分析してみたいと思います。


 「国語」の現代文の問題として漢字書き取りの設問があります。その場合、記述がほとんどです。本文に「規範」とある場合、それを「キハン」とカタカナにして、「漢字に直せ」と設問するケースです。この時、「軌範」と書いたらどう採点するか、おそらく、出題者は×にするのではないでしょうか。


 どんな小さな国語辞典でも「きはん」として、「規範・軌範」を認めているでしょう。しかし、その原文に「規範」とあれば、それを正解として、採点するのが普通です。逆に原文に「軌範」とある場合は、出題者は「軌範」を正解とするはずです。何しろ原文の筆者が使ったという最大の根拠があるのですから。


 こういう設問形式だったら、こんどの出題ミスの指摘は起こらなかったと思われます。何しろ密室での採点ですから。原文の表記という根拠には勝てません。


 ところが、マーク問題として、選択肢に、「規」と「軌」を置いたとしたらどうでしょう。おそらく、高校教師も、あるいは生徒も、父兄も、どちらが正解か質問するに違いありません。どちらも国語辞書に同じ意味として載っているのですから。


 今度のケースは設問形式が記述か、マークかによって生じた問題ではないかと私はまず想像しています。そして、記述では許され、マークでは許されないのは正しいことかという問題にぶっつかりそうです。


 続きは明日にします。