華 | 紫の言の葉

紫の言の葉

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淡く色付く前の小さな花は

咲きひらき香る前の目立たぬ花は

あなたの目に留まる事もなく



大きな葉陰で青く固い実になり

風に吹かれ
雨に濡れ
葉に煽られ

傷付きながらふるえ

時を待ち



初めて

あなたの手の中で

甘い薫りを放ち始める

あなたの掌で熟れゆく

あたし






唇が思い出す間に

思考は時を止める


深紅と臙脂の間の色を一枚

ゆっくり滑らせる指と視線


赤子のように求めるあなたを

赤子のように抱き締める胸に


愛しさが込み上げる


初めての時のようにあなたが微笑む


微笑むあなたが失っていた時間を飛び越える


指が

唇が

あたしの声を誘う


あたしのせつなさが

あなたをかきたてる


耳元に囁かれるなまえ

応えるように漏れるなまえ

かすれたような声で

もういちど呼ばれるなまえ


あなたのゆらぎが

あたしをふるわす


反らせた背中に走る

言葉にならない感覚


知らない波にさらわれそうになる


あなたとあたしの境目がなくなってゆく



未熟なあたしは

追い求める前に

力なく溶かされてゆく



繋いだ

手と身体の奥と

あなたの顔


それだけが

あたしを繋ぎ止めていた




息と鼓動を静める胸に

あたしがせがんだ色が残された


深紅と臙脂の間の色の華が