中国人が買い物の決済に使うデビットカード「銀聯カード」。8月に100億円を超えていた日本国内での利用額は9月に半減した。尖閣諸島問題を受け、中国人の訪日客が減ったためだ。
8月に1万人超の中国人が訪れた沖縄県では「10月以降ほとんど予約が入っていないツアーもある」(県文化観光スポーツ部)。全日本空輸は9~11月分の中国発で2万8000席の予約キャンセルが発生。「今後の予約もどう推移するか見極めがつかない」(篠辺修副社長)状態だ。
中国人が訪日を控え、日本でそれほどお金を使わなくなったのは小売りや観光の現場に痛手だ。それにとどまらず、日本人も財布のひもを締め始め、個人消費に陰りがみられるようになった。
「週末でも外食せずに、自宅で食事する家族が増えた」。1皿105円の回転ずしチェーンを展開するあきんどスシロー(大阪府吹田市)。既存店売上高は8月まで4カ月連続で減少した。
大震災後の「節約疲れ」の反動で好調だった高額品販売にも一服感が漂う。三越日本橋本店(東京・中央)では9月、100万円以上の腕時計の販売本数が前年並みに。高島屋は「客単価は下がっていないが、購入回数が減っている」という。
9月は東京電力の電気料金が上がり、10月から会社員は厚生年金保険料も増える。SMBC日興証券の試算では、専業主婦と小学生の子ども2人がいる年収500万円の世帯で2012年の可処分所得は前年より7万円減る。生活防衛を強める家計を引きつけようと、消費の現場では再び値下げの動きが広がる。
カジュアル衣料チェーンのユニクロは9月、売れ筋の発熱保温肌着「ヒートテック」を昨年より1~3割値下げした。例えば婦人用の長袖シャツは1500円から990円に。しまむらが発熱保温肌着を780円で売り出すなど高機能商品でも価格競争が激しい。
西友は9月に今年2度目の大幅値下げを実施。対象品目は700と予定より200増やした。スティーブ・デイカス最高経営責任者は「家計の負担が高まっていることが低価格志向の根っこにある」と指摘する。
大企業の夏のボーナス減少やエコカー補助金終了も響き、消費者の購入意欲はじわり減退。全国の消費者物価指数(生鮮を除く)は8月まで4カ月連続で下落した。デフレ脱却は遠のき、低価格競争が再燃しつつある。
潮目が変わり始めた日本の消費を襲ったのが、中国の景気減速だ。輸出の落ち込みで企業の生産活動は低迷。8月の製造業の残業時間は前月比で4.7%減と2カ月連続で減少した。東日本大震災の影響が強かった11年5月以来の水準まで減った。残業代の目減りは消費を一段と下押しする。
年金をもらい始めた「団塊の世代」などシニア層の消費はなお底堅い。京王百貨店新宿店(東京・新宿)内の着物のリサイクルショップでは、5万~10万円程度の商品が月に200~300点売れるという。
だが企業活動の低迷で雇用や賃金への影響が広がれば、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費は一段と「低空飛行」になりかねない。
以上、日経朝刊。