今日紹介する句は、
もろもろの愚者(ぐしゃ)も月さす十夜(じふや)哉
(『俳諧発句題叢』 文政三年)
作者は小林一茶(こばやしいっさ)。
作者の略歴は№8012を参照ください。
悩める様々な人々が集まって、
月の光のもと、
等しく十夜念仏(じゅうやねんぶつ)を唱えている。
くらいの意だろうか。
季語は「十夜」で冬。
旧暦の十月五日から十日間行われる念仏法要。
十日十夜にわたって念仏を唱えることで、
千年の善行を積むことができると信じられている。
主に浄土宗の寺で行われる。
愚者というと、
今では、
たんに馬鹿者といった意味であるが、
ここでは悟りを開いていない人の意味。
とはいえ、
悟りを開くことなど、
普通、
できないのであるから、
殆どの人間を指すことになる。
人生に悩みを抱えた多くの人々が、
極楽浄土を願って十夜念仏を唱えに集まっているのだ。
勿論一茶も愚者の一人である。
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私の愛する私の全てであり私だけの掛け替えのないえむえぬ様に。