日経新聞 YAZAWA 60 2009/11/28 vol.1 | 矢沢永吉激論ブログ

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メーカーですって時代は崩壊。自分でレーベルやっていいでしょ

「全部YAZAWAが指揮執ってるじゃないですか。タイミングとか、タッチとか、ハイ、ここって(演出の修正点を)言ったら色変わるでしょ」(本徭3日前、還暦記念の東京ドー厶公演のリハーサル)



 「それ、違うよ!」


 矢沢永吉の顔色がさっと動いた。9月19日の東京ドーム公演。5万人の「永ちゃんコール」を一身に浴びて「さぞかし気持ちよかったでしょうね」。主役に感想を求めた瞬間だった。


 「矢沢さん、幸せでしょみたいなこと、皆さん言うのよ。気持ちがいいとか言ってる場合じゃねえよ、みたいな感じ。背負ってるものがデカすぎる。二足のワラジ履いてるわけですよ。1人は完ぺきなエンターテイナー。もう1人は裏方の総合部長みたいなもんだから。事故もなく無事にここまで来れてよかったっていう方が大きいんだよね」


 両肩に食い込む2つの重圧。公演リハーサル初日に戻ってシンガー矢沢の方から話を始めたい。9月3日。ピンクのシャツに黒のスエットパンツ姿で、彼はスタジオにいた。バンドメンバーやスタッフら20人ほどの表情に「本番間近」の緊張感か張り付いている。そして矢沢の第一声。


「俺(おれ)あばらにヒビ入っちゃってさ」。「エッ?」と黒人ベーシスト。「How Come(なぜ)?」と英国人ドラマー。


状況説明を促す沈黙に向かって矢沢が言葉を発した。


「5日ぐらい前、朝起きたときに、アレッ?イテエなと。医者に言わせれば疲労骨折ってやつ。原因分かんないの。バンソウコウ張って薬飲んで、ほっとくしかないって」。


声音に憂色はない。「面白いね、疲労骨折って」。やおらシャツをまくり上げると、胴に巷かれた「ゴム製のサラシ」があらわになった。


 「どっか打った記憶もないし。横隔膜の辺りだから高いパート歌うときグッとくるわけよ。鈍痛がね」


 公演まで16日。誰もが同じ懸念を抱いたであろう。


「ヒビがあろうがあるまいか本番やるしかないんだから。あばら1本ぐらいでガタガタいう問題じゃない。どうでもいいんだよ。関係ない」。


本人か強弁する以上、周りも「無関係」と信じて事を進めるしかないが、彼が得意とする自己暗示の典型例にも思えた。