1980年代、東芝EMIで矢沢のワーナー・パイオニアからの移籍を仕掛けたほか松任谷由実などを手掛けた石坂敬一・日本レコード協会会長に「矢沢の立ち位置」を聞いた。
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最近は「歌は世につれ世は歌につれ」という法則性がなくなった。その背景にはメロディー不作とヒップホップの隆盛、そして音楽制作のデジタル化がある。
映画「タイタニック」でセリーヌ・ディオンが歌った主題歌が「世界の歌謡曲工場」米国発の最後のメロディーではないか。
日本の音楽CDの総生産額は10年連続で減っており、2008年は3千億円弱と10年前の半分以下。一方、有料音楽配信は好調で、昨年初めから携帯電話の「着うた」「着うたフル」のヒットがCDアルバムのヒットにつながる流れができた。
今年はCDと有科音楽配信の比率が3対1になる見通し。早ければ5年後に1対1になる可能性もあり、音楽業界にさらなる地殻変動が起きるのは間違いない。
配信の単価はCDの2割程度だから現在の売上額を維持するのは難しく、経営手法を根本的に変革しなければならない。
そこでは新しいジャンルを含めた商品開発。そしてスーパースターの登場が求められ、CDに関して言えば、40歳以上の本来は音楽好きな層の「音楽返り」を促すことにある。
矢沢氏は経営者であり、哲学者、一種のカリスマ的リーダーの顔を持つ。もちろん紛れもないロックンロ一ラーだ。
いいメロディーを書けるのも絶対の強みで、今回の自主レーベルの立ち上げは、なるぺくしてなった成功。業界にとって矢沢というアイコンが絶対にプラスになる、