数年前、70過ぎのおじいさんに焼き出しに富士山を焼いた丁子刃の太刀の

製作依頼を受けました。

正直、「富士山かぁ?とても難しそうなので断ろうかなあ」と思ったのですが、

手付の札束を目の前に置かれ、貧乏刀鍛冶の私は断れませんでした。

しかし、それが、苦しみの始まりでした。

 

華やかな丁子乱れは少し崩れても気になりませんが、直刃は少しでも崩れると

様になりません。感覚的には、富士山の絵画的な刃文は、乱れ刃ではなく

直刃に近いものがありました。

また、丁子刃の焼刃土を塗るにはスピードとリズムが必要なのですが、焼き出しの

富士山に手間を取られるために、なかなかリズムよく焼刃土を塗れませんでした。

粘土の調合、塗り方等、随分試験し練習しましたが、結局、富士山を安定して

焼くことは出来ませんでした。

 

 

昨年の秋は、二つの研修会の講師、刀匠会のイベントの幹事、父の介護の事、

急ぎの難しい刀の製作、そしてポーランドの刀剣展への随行など、目が回る程

忙しかったのですが、そこに、富士山の刀の催促の電話が頻繁にかかる様になり、

寝れなくなってしまいました。

能天気そうな私が、3か月間も睡眠薬のお世話になりました。

 

ようやく納める事が出来、今はほっとしていますが、とても草臥れました。

正直、富士山に丁子刃は、もう頼まれても造りたくはありません。

(まあ頼む人もいないと思いますが、、、)

私としては、技術的にも構成的にも、富士山には直刃の方が相性が良いと

思います。脇差にビシッと決めると格好良いでしょうね。

 

前回のアリのような生き物の写真はクモでした。

その名も、アリグモ!

前足2本を上げて、アリの触角のように見せています。

なんと賢いのでしょう!初めて見つけた時には感動しました。

日本には6種類いるそうです。

そうそう、アリバチというのもいます。