メジャーデビュー後、ファーストアルバム「コンベス」を含めてPerfumeの音源に加わった8曲のうち、歌い出しソロパート及びユニゾンで始まる曲のソロパート歌い出しの担当はのっちが4曲(リニア、コンドラ、エレワー、w2)、かしゆかが2曲(ファンデ、パフュ)、はっきりとは判別できない「シティー」を除外し、歌い出し部分で三人に細かく歌詞が振り分けられた後、ソロパート歌い出しがあ~ちゃんとなる「PSPS」。
インディーズ時代からのっち、かしゆかの役割が入れ替わっているように見えます。

この頃、MIKIKOさんの振り付けもまだ従来の「歌の振り付け」のイメージに忠実で、ほぼ必ずソロパートを担当するメンバーがその場面でセンターに立つことになっています。
中田さんのめまぐるしく歌い手を入れ替える振り分けに合わせるのはさぞかし大変な作業だったのではないか、と苦労が忍ばれますが、そのおかげで、振り付けを見ながら聴くことで、歌声の判別が難しい部分でも、例えば誰と誰の組み合わせによるユニゾンであるか、とか、歌い手本人の声を重ねているせいでユニゾンに聴こえる部分が実はソロパートであったか、ということを理解することが出来るようになっています。
MIKIKOさんブラーヴァ(でいいのかな?)。

中田さんによるボーカルパートの振り分けは、

あ~ちゃんソロ
かしゆかソロ
のっちソロ



あ~ちゃん・かしゆかユニゾン
かしゆか・のっちユニゾン
あ~ちゃん・のっちユニゾン

さらに、三人によるユニゾンを加えて7通り成立します。
この7通りを等分に使い分けるのではなく、曲のイメージや歌い手の音楽的な解釈によって構成上のバランスを組み替えていくのがPerfumeサウンドの特徴となっています。
ボーカルエフェクトのコンセプトみたいなものを考えると、まずインディーズ時代の「個性の野放し」があり、「w2」「シティー」あたりから「個性の圧縮」が始まり、「ポリリズム」収録のカップリング曲「SEVENTH HEAVEN」くらいから「個性の強調」へと変化し、アルバム「⊿」から現在までの「個性の融合」に進化してきています。

今回のテーマは、かしゆか、についてではあるのですが、もう少しPerfumeサウンドについて書いていきます。

中田さん提供によるPerfumeサウンドは、ボーカルエフェクトを大胆に取り入れることで従来の、
いわゆるJ-POPのイメージから距離をおくことになりました
その他にも中田さんはPerfumeサウンドの中から慎重にJ-POP的なイメージを取り除いています。

J-POPという呼称は、元々は日本人アーティストの音楽にかっこいいイメージを付加したいと思ったレコード会社関係者が、当時洋楽しかかけないという印象の強かったJ-WAVEに掛け合い、このラジオ局の番組中でも日本人アーティストの曲をかけてもらえるようになった。
J-WAVEでかけるような日本人アーティストの曲だからJ-POP。
J-POP関係の著書の中で読んだ一節です。

この説が正しいのかどうかは分からないのですが、J-POPという言葉は元々が曖昧としたイメージ的なものでしか無く、サウンドの個性による区分というわけではない、ということは確かなのではないか、と思います。

ただ、いかにもJ-POP的な、と言いたくなるような特徴みたいなものはあります。
以前に、J-POPのヒット曲の中で使われているコードはほとんど同じもの、という説を実際にキーボードでコードをひきながら説明するブログ主さんがいらっしゃいました。
そこまで明確な区分というわけではないのですが、まあ、特徴の一つとして挙げられるのが、イントロ部分のかっこ良さと、歌部分に入ってからの凡庸なイメージの乖離、です。

イントロ部分のサウンドはすごくゴージャスでカラフルでスピード感もあってかっこいい、どんな曲が始まるんだろうという期待感が溢れるようなものであるのに、歌に入るまでに急ブレーキをかけるようにスピード感が失われ、ゴージャスな音の厚みも、カラフルな音色も薄れ、凡庸な、歌謡曲的なメロディーが始まる。

J-POPってノリのいい歌謡曲、と言ったのはたしか昔のタモリさんだったと思うのですが、ゴージャスなイントロと貧相なメロディーとの乖離の根っこは、実はJ-POP以前、ニューミュージック全盛の時代にまで遡る深い病理で、つまり曲のイメージってアレンジ次第でどうにでもなってしまう部分がある、という問題です。

アレンジの段階で、海外のアーティストの作品から、よく言えばインスパイアされた、え~差し障りの無い言い方をすれば大胆に取り入れたサウンドを切り貼りするように付け加えることで、歌謡曲が、かっこいい洋楽のようなイメージに変わる。

僕と同世代の方ならおわかりいただけるんじゃないかと思うのですが、あれ?このイントロとか、あの間奏とか、海外のロックバンドのあの曲の…という思いにとらわれたことのある経験ってけっこうあるのではないか、と。

現在でも同じことが行われている、というまでは言いませんが、ただ、楽曲の主旋律部分とはイメージとして直接の結びつきの感じられないキャッチーなイントロによって全体が包装されている、という構造みたいなものはあまり変わってないような印象を受けるのが、ざっくりと大まかに捉えたJ-POP全般の特徴かな、という気がします。

で、中田さん提供によるPerfumeサウンドの中にも、そのJ-POP的な構造みたいなものは感じられるんですが、アレンジャーとして天才的な感覚と手腕を持つ彼は、巧妙にその危険性を回避している、というのが次回のテーマとなります。

え~と、とってつけたみたいですが、読んでくれているみなさんにメリークリスマスということで。

季節感って何かね?

うっわ、びっくりしたお爺さんどこにいたの? ▽・w・▽