「ポリリズム」制作の段階で、Perfumeのブレイクがある程度予測されていた、スケジュールから考えてもブレイクすることが織り込み済みであっただろう、という状況証拠はプロモーションの判りやすさにあります。


3人の顔のアップを多用(顔を覚えてもらうため)したPV、ジャケット写真、著名な振付師によるサビ部分当て振りの振り付け、ヘア&メイク、衣装によるキャラクターの確立(パーマ&フェミニン、ストレートロング&ガーリッシュ、ショート&ボーイッシュ)、そしてボーカルパートの振り分けは「ドーナッツ」パターン。



とても大事な キミの想いは            (A)


無駄にならない 世界は廻る            (K)


ほんの少しの 僕の気持ちも            (N)


巡り巡るよ                       (ユニゾン)



この曲が発売された頃、まだPerfumeは主要音楽番組に出演することがなかったために、プロモーションビデオによるイメージが、ほぼそのままユニットのイメージへと結び付いていた、と考えてもいいんじゃないか、と思います。


タイトルが出た後、あ~ちゃんのアップ映像とブレス音から始まる「ポリリズム」は、生声のような、でもロボ声も混ざっているような、現行のボーカルエフェクトと比べて聴いてみると明らかに遠慮がちなボーカル処理、メロディそのものもJ-ポップへ歩み寄っているように見えます。


しかし、中田さんはポリループ部分で大きく「ありがちなメロディ」から「ポリリズム」を逸脱させていきます。

Perfumeのブレイク曲「ポリリズム」は、楽曲の中ですでに「ブレイク」しているわけです。


楽曲構成の破綻直前にまで踏み込んだポリループ部分を、CGをはめ込みながら、3人の顔のアップを連続させた映像を中心に成立させた関和亮さんの手腕とGonzoスタッフの技術はお見事の一言。

関さん、PTAムービーの中ではしゃぎ回っているだけではないんです。


このPVが制作された時期には、まだ香瑠鼓さんによるサビ部分の振り付けしか完成しておらず、ダンスシーンではずっとあ~ちゃんがセンターのポジションのまま。


曲始まりのアップ映像とソロパート、ダンスシーンでのセンターポジション、曲終わり場面でハート型に変わった青い地球を手のひらに受け止める母性に溢れた表情と合わせて「Perfumeのセンター あ~ちゃん」を強く印象付けるPVとなっています。


あ~ちゃんをセンターポジションで、そしてボーカルのエースとして扱った曲というのはシングルのリード曲では事実上この「ポリリズム」だけ。

無理に当てはめれば「リニア」も「シティ」もあ~ちゃんのボーカルを軸に、と考えることも出来ますが、「ポリリズム」ほどには意識的になされてはいないように思います。


半ば当然のこととしてブレイクが期待されたシングルのリード曲センターというたった一度の大役を、Perfumeそのものであるあ~ちゃんは、堂々と演じきります。


歌唱力ではPerfumeのトップと言ってよいだろうあ~ちゃんが、シングルのリード曲で重要なパートをのっちやかしゆかほどには任されないことには様々な理由が考えられます。


まずは発声法、続いて独特な歌いまわし、そしてやや過剰な感情移入。


いずれもが、中田ヤスタカさんの好みに、サウンドに合わなかったからではないか、と同時に、20歳までのPerfumeのユニットイメージの中心にあったともいえる「少女性」みたいなものとも合致しなかったから、と考えられるような気がします。


次回では、あ~ちゃん個人のボーカルにスポットを当てて、Perfumeサウンドの中でボーカリストあ~ちゃんが果たしてきた役割について考えてみたい、と思います。


タイトルは、希望と期待と要請のはざま ▽・w・▽