探偵小説と記号的人物(キャラ/キャラクター)     笠井 潔  


探偵小説論 Ⅱ                        笠井 潔


県庁の星                             桂望美


花まんま                            朱川湊人


ふちなしのかがみ                       辻村深月


矢上教授の午後                        森谷明子


キッド・ピストルズの最低の帰還              山口雅也   


映画をめぐる冒険                       村上春樹・川本三郎


マギの聖骨 上・下                      ジェームズ・ロリンズ著 桑田 健訳



借りる。

読む。


笠井潔さんの評論活動は幅広い分野にわたっていて、ミステリィ関連はその一部。

いつ、どれを読んでも非常に思考、思索を刺激される内容で、この人の評論の方法論みたいなものをすごくすごくレベルを下げたものにして、Perfumeについて考える時の方向付けの参考にさせてもらっている。


今は時間が無いだろうけど、続・ぱふゅファン受験生くんあたりにはぜひ読んでみてもらいたい著書。


桂さんの「県庁の星」は、織田裕二くん、柴崎コウさん主演で映画化されていて、そちらを先に観て(1年位前)ようやく原作となる小説の方を読んでみる気になった。

読み始めの印象だと、織田くんのイメージよりも主人公のキャラは軽い。

そして、おそらくやや軽めのキャラクターであるほうが、この物語のストーリーには合っているはずであり、やはりこういうものってちゃんと原作を当たっておかないと深く理解することは出来ないんだな、とあらためて感じる。


朱川さんは、この「花まんま」で2005年に直木賞を授賞。

1963年生まれ、とほぼ俺と同世代の人であって、この人の描く昭和の世界を懐かしいというほど昔のことだとは感じられないのが不思議な感じ。

自分の中で昭和の時代がまだなんとなく近くに存在しているもの、と思っているせいなのかもしれない。

21年経っても、まだ「平成」という焦点のぼやけた年号に慣れてないというのも困ったことである。

ああ、そうだ、今が21世紀ということにも実感が無いな、そういえば。

しつこいようだけど、21世紀にアトムがいないなんて(以下省略)。


辻村さんは、若い本読みたちにぜひすすめたい作家。

悪いことは言わないから


僕のメジャースプーン



名前探しの放課後


だけは読んでおいてください。

男の子には、誰かを守る時には覚悟を決めなきゃいけない時ってのがあって、この二つの作品(違う物語に見えて実は…)に登場する男子たちは、その覚悟をびしっと見せてくれる。

そんなにかっこいいことばかりではなかった、元男の子、のおっさんチームにも読んでいただきたい物語。


この作品集は、ホラー系不思議話、なのかな?

端正な文体の作家さんなので、文章を読んでいるだけでもいいんですけどね。


森谷さんも1961年生まれ、考えてみればいつの時代でもこうした40代の作家が現役バリバリで小説界を引っ張っていて、自分の同世代の人たちがその役を担うようになっているのだなぁ、と思う。


40代になると本を読む意味、みたいなものがちょっと変わってくる。


若い頃に読んだ小説の中の世界というのは自分よりもやや上の年代の物語であることが多く、登場人物たちの年齢に達する自分は未来の自分だった。

同世代のでてくる小説では、テーマや方向性がどうであれ、未来につながる時間の流れを感じられた。


今は違う。

物語の中に出てくる自分と同世代の登場人物はくたびれ果てていて、子育ての重要な年代も終え、いよいよただ歳を取り、老齢に近づく自分と対峙しなければならない年齢に差し掛かっている。


ショックなのは、自分よりは若い30代の登場人物がくたびれた世代として描かれたりしていることで、おいおい、30代でそんな風だったら、45の俺なんてどうなっちまうんだ、と笑いも苦くなる。


ライトノベル系の作家の作品でも読もうものなら、登場人物なんて自分に子供がいれば、間違いなくその世代か下手をすればさらに若い連中ばかり。

若さって退屈な時もあるけど、その退屈さが懐かしく思える時が来るんだよ、退屈さを大事にね、と声をかけたくなる。

歳を取った証拠だ(笑)。


山口雅也さん、作品をちゃんと読んだことの無いミステリィ作家の一人。


この人に限らず、最近は自分がかつて読んだことの無い、或いは読む気にならなかった作家の作品をなるべく読むようにしている。


読書傾向というのはどうしてもかたまりがちになる。


作家の文体と自分の読むリズム、みたいなものの合う合わないがあって、俺の場合はどうしても流麗な文章、端正な文体に魅かれてしまい、自分に合った、と感じた作家の作品ばかりを読み漁るようになってしまう。

それはそれで一つの読書スタイルなんだけど、でも、世界の枠は同じ場所に敷かれたままだ。


たまに自分の住む街を離れて、東京をぶらついてみるのと同じ気持ちで、もっと色々な作家の描く世界を歩いてみよう、としてみたりする。

若い頃に夢中で読み漁った作家の作品ほどにはのめりこめないんだけど、穏やかに、本を読むという行為を楽しんでいる。


とか言いながら、結局何冊か借りるうちの一冊には自分の敬愛する作家の本を紛れ込ませてしまう意志の弱さ。

村上さんのこの本は、たぶん、翻訳以外で一冊ちゃんと通して読んだことの無い唯一の本のような気がする。


ああ、あと回文の本も読んでないか。


この「映画をめぐる冒険」が出版されたのは昭和60年、25年前くらい?

村上さんの文章も若く、こりこりとして歯ごたえがある。


マギの聖骨は、キリスト教の薀蓄系アクション混じりのサスペンススリラー。

キリスト教の裏面史みたいなものを読んでみたくなっても、思いっきりうさんくさいものか、学術論文に近いような堅いもののどちらか両極端になってしまうので、こうしたエンターテインメント作品で上澄み部分の浅い知識を仕入れるのが精一杯。


なんかいい本無いかな ▽・w・▽