Perfumeは2005年9月21日に、シングル


リニアモーターガール


で、念願のメジャーデビューを果たします。

続いて2006年1月11日に


コンピューターシティ


を、同年6月28日に


エレクトロワールド


をリリース。

「近未来三部作」の時代です。


各シングル収録曲と、歌いだしソロパートの担当は


1.リニアモーターガール             (N)


 cw1:ファンデーション                (K)


 cw2:コンピュータードライビング          (N)



2.コンピューターシティ                 (除外)


 cw:Perfume                     (K)



3.エレクトロ・ワールド                 (N) 


cw:wonder2                      (N) 



と、なっています。

全国インディーズ期においてすでにライブで披露されていた「ファンデ」「Perfume」、メロディ部分を全てユニゾンでボーカル処理した「シティ」以外、全てのっちのボーカルで歌が始まっていることがお分かりいただけるか、と思います。


メジャーデビュー第一弾の「リニア」の頃までは、まだ「かしゆかセンター」時代の名残りのような雰囲気が残っていて、「リニア」の衣装のボタンがかしゆかだけやや大きい、ということなどは以前に書いたとおり。


ただし、この頃から写真撮影の時などでは(普段Perfumeと接触のないメディアであればあるほど)のっちを真ん中にしていることが多くなり、その傾向は現在までそのまま続いています。


「近未来三部作」の頃、高校二年生になって少女から半分大人、に成長したこの頃から、のっちは伸びやかな肢体とボーイッシュな雰囲気というアンバランスさを備えた美少女として対外的な(ファン以外が見る)Perfumeのイメージを引っ張っていくようになり、「エレワー」ではついにPerfumeのど真ん中に立つことになります。


さて、のっちの台頭を告げる「近未来三部作」第一弾「リニア」のボーカルパート振り分けは、というと。


振り付けはイントロにあたる部分ではずっとあ~ちゃんセンター黄金比率、歌い出しソロパートからのっちセンター。


tiny tiny ハートウィルス 2:30AM(ツーオクロックサーティ エイエム)


ハイスピード ハイスピード リニアで


までのっちソロ、続く


高速移動な


NO! up to date girl リニアモーターガール


fall in fall in love


ではユニゾン、そして


tiny tiny スキマが 解明できないの


の部分からフォーメーション移動、かしゆかセンターとなり左側に移動したあ~ちゃんソロ


rainy rainy 心が 


まで、かしゆかソロで


泣いても逃げない


から☆部分ユニゾン、となっています。


「リニア」という曲のイメージでは、3人のボーカルが強いエフェクトをかけられていて、全編機械的な声で歌っている、という先入観を抱きがちですが、実はそういうエフェクトを使っているのは、延々と繰り返される「リニアモーターガール」という歌詞の、しかも一部だけ。


歌う場面になると、圧縮を受けたような声にはなって歌い方がそれまで以上にまっすぐなものになってはいるものの、基本的にメンバーそれぞれの歌声がはっきりと分かる程度の加工しかされていません。


充分に生歌でもいけそうなボーカルエフェクトの雰囲気であり、実際、この曲のリリースイベントなどでは「被せ生歌」の状態で披露されていて、その動画も存在していました。


ただ、振り付けの関係からどうしても歌っている最中に3人の歌声が(特にかしゆかとのっち)震えてしまい、かなり苦しそうな様子がうかがわれ、そのせいかライブで披露されていた時期が非常に限られています。


「リニア」から始まった「近未来三部作」は、Perfumeがメジャーデビューして以降、初期の代表作となる傑作揃いで、今でもこの頃のイメージがPerfumeにはついてまわっているのですが、Perfumeの楽曲の流れ、歴史を見てみると、この時代だけの非常に特殊なサウンドであることが分かります。


Perfumeサウンドというのは、Perfume3人の実年齢よりもやや幼く楽曲の世界観を想定することでユニットの「少女性」のようなもの、イメージをリードしてきました。


思春期=中学生時代を過ぎ、青春時代=高校生と成長したメンバーのイメージに合わせるように、恋愛をテーマに据えた「ションションション」が作られ、これらの曲から感じる「乙女心と切なさ」を、Perfumeサウンドのど真ん中としてユニットの売出しを考えていた、と考える方が自然なのではないか、と思われます。


ただ、とても順調な歩みとは言えなかったメジャーデビューへの道を進み続けるために、おそらくはメジャーデビューを引き受けてくれたレコード会社主導のサウンド制作が行われたのが、まず「リニア」であったのだろう、と思います。


「リニア」はテクノポップとしては傑作であり、非常に優れたサウンドデザインなのですが、16歳の少女ユニットのメジャーデビュー曲としてはあまりにも、何というか、あまりな作品です。


この曲のサウンド制作の過程で何があったのか、は未だにはっきりとは分からないのですが、木の子さんがこの曲を最後に初期チームPerfumeから脱退してしまうことが、あまりな雰囲気を象徴しているようにも思えます。


メジャーデビューの代償のように始まった特異なサウンド「近未来テクノポップ」が活動の主眼に据えられたことで、本来進むべきはずだった方向性「乙女心と切なさ」への道は閉ざされた、或いは歪められたように見えました(歌詞そのものを読めば「リニア」にしても充分に「切ない」のですが、その「切なさ」はサウンドとストレートには結び付いていません)。


しかし、Perfume大好きなチームPerfumeは、レコード会社の意向に沿う形でサウンド作りを進めながら、慎重に、そして確信犯的に「切なさ」とサウンドの融合をはかります。


「切なさ」の復興をテーマに(と、僕が勝手に考えているだけですが)作られ、本来進むはずだった路線にPerfumeのイメージを巧みに引き戻したのが「シティ」「エレワー」であり、復興運動が結実したのが、「PSPS」である、というのが、今回の「引っ張り」です。


次回のタイトルは コンベス~ファン・サービス 生き残るということ ▽・w・▽