Perfumeは2003年にインディーズで全国デビュー、2005年にはメジャーデビューを果たしている。

そのことで何が変わったか、というとCDの売り上げ枚数が増えた。


せいぜい1000枚に届くかどうかだった売上げ枚数は数千枚のオーダーに達し、リスクを犯してメジャーデビューを果たした効果はたしかにあった。


ただ、そのことが活動にどのような影響を与えたか、というとたいした変わりはなかったんじゃないか、という気がする。


何が変わらなかったか、というと彼女たちを支持するファン層が、である。

何故変わらなかったか、というと彼女たちの活動内容が大きく変わることはなかったから、である。


ライブやイベントを行い、そこには握手会等、アイドルである彼女たちとファンが限られた時間ながら直接言葉を交わしたり出来る時間と空間があった。

ファンが彼女たちに顔を名前を覚えられ、手紙のやり取りをし、自分推しのファンであるはずの人物が他のメンバーに誕生日プレゼントを渡したりしていると、ちょっと気にする素振り見せたりすることもあった神話のような時代。


ライブやイベントに通うファンの絶対数が限られていたからこそ可能だったインディーズ時代と大して変わらない活動をPerfumeはブレイクを果たす2007年まで続けることになる。


大して変わらない、と書いたが、メジャーデビューしてイベントの仕切りがアミューズだけ、からレコード会社に変わったことで、CD発売前後のイベント期間をのぞけばむしろ活動する機会は減ってしまったかもしれない。


それでも宇多丸さんや掟ポルシェさんら外部プロデューサーたちによる、音楽イベント等への出演や地道なライブ活動によってPerfumeはじりじりとファン層を拡げ、その数を増やしていく。


そしてPerfumeはブレイクする。

2007年の7月からそれは始まり、9月の「ポリリズム」発売によってブレイクが明らかなこととして認知されるようになる。


ブレイクをしたことでPerfumeは、その活動内容は変わったか、というと今度は少し変わった。

新たなファン層が開拓されたことで、それまでのファン、若い、というより幼い、あるいは幼さを残した女性アイドル好き向けに行われていた活動が減った。


握手会は2007年に、リリースイベントは2008年の初頭に行われて以降、現在までの間「中断」されたままだ。


2007年の中頃からファンになった僕のようなファン世代の人間が、Perfumeやその周囲に感じていた独特の雰囲気、というのは言ってみればインディーズ臭さみたいなものだったのかもしれない。


Perfumeは、本来ブレイクを果たしたことで消し去るはずだったインディーズ臭さを保ち続けたままの活動を続けることで、ごく一般的な、ライトなファン層に留まるべき人たちまでをコアに取り込み、それまでにない「Perfume現象=インディーズアイドルの雰囲気を身にまとったユニットが音楽面を評価されてブレイクしていく現象」を巻き起こしていく。


ゆるいMCに代表されるPerfumeのライブ独自の、と思われた空間は、現在Perfume以外の少女ユニットの「現場」に足繁く通い、「古参気分」を味わっている元Perfumeファンの人たちのレポを読む限り、実は少女ユニット独自のライブ空間だったのだ、ということが分かる(そういう意味であなたたちのレポは、観察対象としてとても興味深いです、ありがとう)。


ただ、いずれそれは失われなければいけないものだった。

インディーズ時代の名残りはメジャーデビューしたことで薄まり、ブレイクを果たしたことで消え去るべきものだった。


Perfumeは、インディーズ時代のファンへの感謝を忘れなかった。

アーティスト志向の強い彼女たちにとっては、インディーズ時代のファンに代表される「少女ユニット好き」の多くは、本来のぞんだファンとしての姿かたち、雰囲気ではなかったかもしれない。

それでも彼女たちはブレイクしてからも、一番苦しかった時期に彼女たちを支えた愛すべき「ヲタ」たちを、その時代やその時代の雰囲気を切り捨てることをしなかった。


インディーズアイドルの雰囲気を身にまとったままブレイクに成功したこと、でチームPerfumeはユニットをどの方向に進ませるべきか、についての判断に苦しむことになる。


Perfume独自の路線を開拓しながらさらにブレイクを続けていくか、ブレイクを続けていくことの困難さを見極め、少しずつ軌道を修正しながら「普通の人気ユニット」への道を進むべきか。


チームPerfumeは2008年の早くから(GAMEツアー前、武道館ライブの決定時期)後者の道を選びながら、軌道の修正に長い時間をかける。

葛藤と矛盾を抱えたまま、Perfumeは武道館のステージに立つ。


2008年、11月 ~続 ▽・w・▽