さて、これからは劇のストーリーや演出についてネタバレがございます。


それを気にしていたら、感想やレビューなどは書けないのですが、一応ブログで記事を書くもののマナーとして一言先触れ、とさせていただきます。

ご注意を。


まず登場するのはダンサー。


音楽のない状態でのダンス、ジャンルを特定しにくい、ちょっと前衛舞踊を思わせる踊りから舞台は始まります。


まず舞台奥から一人、やがて舞台両脇に設置されたスチール階段から一人、舞台奥上部に設けられたキャットウォークみたいな通路にまた一人。


舞台奥を駆け抜けるダンサーが一人、そのダンサーが別の舞台袖から登場して、すぐに退場したり、を繰り返しながらダンスシーンがしばらく続き、やがて群舞となります。


キャットウォークに真っ白なスーツを着た男性が登場。

踊る人たちを見つめるようにハーモニカを吹いています。

1曲吹き終えると、キャットウォークを歩き、立ち止まり、両手を広げて飛び降りる仕種、下で見ていた男性の制止する声もきかず、そのまま舞台奥へ飛び降ります。


その衝撃音とともに始まるタップダンス。

圧巻。


ストーリーは、バスケットボールのシャツを身につけた3人の若者が登場してくることでうごき始めます。


ここから先は、観てのお楽しみ、ということで。


ストーリーは三つの人間関係を軸に進行します。


まずはストリートバスケットボールチームの若者たち。


バンド MISSING BOYsのリードボーカル カガミハラコウヘイのプロデビューを巡るトラブル(ライブハウスのスタッフ オギノショーコも含めて)


そのトラブルを持ち込む胡散臭いプロデューサー ユカワキョウイチ と、彼と過去関係のあった(らしい)タケハラヨーコ 


ただ、基本的にストーリーはシンプルなもので、この舞台劇の主人公はタイトルにもあるように故 尾崎豊さんの音楽です。


俳優たち、3人の女性シンガーたち、そして中村あゆみさんと、「I Love You」を歌う日替わりSPECIALゲスト(今日は河口恭吾さんでした、素晴らしかった!)によって歌われる尾崎豊さんの作品は、全編を通して計18曲。


1964年生まれの僕にとって、65年生まれの尾崎豊さんは同世代のロックシンガーだったのですが、文系地味少年だった僕には尾崎さんの楽曲というのはあまり共感を感じるものではなく、代表曲を数曲知っているのに過ぎません。


以前の職場である結婚式場の仕事の一環として出張パーティーの料理出し、というものがあり、その場所から荷物を積んで帰るトラックの助手席でラジオのニュースとして彼の死亡を知ったのがもう17年前の出来事。


同世代ながら音楽的な接触がほとんどないまま過ごしてきた彼の音楽が、このミュージカルをきっかけに、少しだけ身近に感じられるようになりました。


歌に関して書くと、俳優陣の中で素晴らしかったのがバスケチームでもあるSong Ridersのメンバーの一人、頭もしゃもしゃの方(多分KGさん)と、コメディリリーフとして登場する女性マネージャーに率いられる若者デレアムくん(ルーマニア人と日本人のハーフ、デレアムくんは本名でそのまま登場です)。


どちらも豊かな声量によって安定した歌声を聴かせてくれました。


そして何と言っても中村あゆみさん。

お見事でした。


ハスキーな声を振り絞るような熱唱は尾崎さんの歌にピッタリと寄り添って、迫力の低音部から、ハスキーながらスコーンと抜ける高音部までが、会場の隅々にまで響き渡ります。


一時期目立った活動がなく、たまに往年の名曲を歌う、という感じでテレビ出演なさった時の印象では、ああ若い頃の迫力はさすがにないかな、なんて感じたものですがこの舞台では現在の年齢でなければ歌えない奥深ささえ感じさせる熱唱。


河口恭吾さんとともに、プロの歌手の底力を思い知らされました。


早乙女太一くんも熱演。


バンドのリードボーカルとして2曲を披露するんですが、尾崎さんを髣髴とさせる歌声に驚きました。

悩み、迷い、自分の行き場を見失ってしまうキャラクターを、痛々しさを感じるほどに演じて、うまく言えないんですけど、とても雰囲気のいい役者さんだな、と感じました。


松本まりかさんは、やはり声がいい。

すっと胸に入り込んでくる声なんですね。


そして丹羽麻由美さん。

実は、それほど出演シーンが多いというわけではないんですね。

ダンスのシーンでも出ていらっしゃったのかな、バンドメンバーの衣装で出ていた時はもちろん分かったんですが、それ以外でも出ていらっしゃったような気も…

ドラムス役としてかっこいいところを見せてもらいました。


麻由美さんは背が高くて舞台栄えするスタイルの持ち主、出てきた瞬間から、おお麻由美さんだ、と感動しました。

ちょっとアクシデントもあったんですが、それは実際観た者だけの秘密、ということに。

対処の仕方が堂々としていて、さすがプロだな、と感じました。

カーテンコールの時にも、自分より後ろにいたキャストの人をさりげなく前へ、目立つところへ押し出す、とか、人柄がしのばれる気配りが素敵なんですよ。

生で観られて本当によかったです。


今回はもう一つ、プロのダンサーの身体の動き、に注目して見ていました。

やっぱり専門家はすごい、身体つきが全然違います。

骨格ごと造り替えているんじゃないか、というくらい。

専門的に鍛えられた肉体だけに可能な動き、に感動。

特にタップダンサー熊谷和徳さんのトーキングタップ、とも呼ぶべき動きが一際すごかったです。


舞台っていいですね。

ほとんど初体験だったんですけど、静岡から観に行った甲斐がありました。

スケジュールとタイミングさえ合えば、観劇の機会の多い東京、周辺エリアの方が本当にうらやましいな、と感じました ▽・w・▽