2006年12月20日、配信限定リリースとして


Twinkle Snow Powdery Snow


を発売したPerfumeは、その翌日に原宿アストロホールでのライブ


Perfume Presents~Perfumeがいっぱいサンタ呼んじゃいました♪~


で同曲を初披露。


「TSPS」は、好評を受けて翌2007年2月14日に完全限定盤として発売された


Fan service [sweet]


に、


チョコレイト・ディスコ


とともに収録されます。


2006年という1年は、1月11日に発売された


コンピューターシティ


6月28日発売の


エレクトロ・ワールド


8月2日発売の「コンベス」に収録された


パーフェクトスター・パーフェクトスタイル


と、可愛くてかっこよくて、楽曲は少し切ない、というPerfumeのユニットイメージが現在の形として完成していく過程であるとともに、音源を被せながらも基本的には生歌によって行われていたライブスタイルが、段々とリップシンクという新しいスタイルに移行していく重要な1年となります。


三部作の中で強力なエフェクトをほどこしたボーカルにおける実験は、「w2」によって曲の一部にヴォコーダーのための音素材として使われる、というところまで進みますが、そこで一度区切りをつけられ、「PSPS」での、3人の声の個性をより重視したエフェクト、という新しい局面に踏み出します。


Perfumeサウンドにおけるボーカルエフェクトは、「PSPS」「TSPS」「ディスコ」という、本来生歌披露も可能なはずの楽曲にまで及び、少しずつCDの売り上げが伸びていくというファンからの支持を受けたことによって、後もどりの出来ないところまで踏み込むことになりました。


無機質な近未来的なイメージの実験作「三部作」で強力なボーカルエフェクトが使われたことは、楽曲のイメージ、方向性から考えても妥当なものに思われますが、「PSPS」以降に発表された曲の多くは、Perfumeの実年齢により近い、等身大の登場人物を主人公とした歌詞の世界観を持ちます。


その曲でさえ、強力なボーカルフェクトを受けた状態で収録されたことは、Perfumeの最大最高の魅力であるライブスタイルにも大きな影響を及ぼすことになります。


「TSPS」の初披露はPerfumeにとって初となるライブDVD


Fan service [bitter]


の中で見ることが出来ますし、「ディスコ」に関しては[sweet]のリリースイベントというごく初期の頃からのライブ映像が残っていますが、いずれも「リップシンク=口パク」状態での披露となっています。


この時に、実際に3人が声を出しているかどうか、は問題ではありません。


その声がマイクを通した音声として映像に、そしておそらくはライブ、イベント会場内に聴こえてこないことが重要です。


チームPerfumeの選択として、ライブ中に完全な「口パク」状態でのパフォーマンスを認めたこと、が重要になってきます。


ボーカルエフェクトによって、もしPerfumeが恩恵を受けているとするならば、それは歌唱力に対してではなく、声質に対してのものだ、と僕は思います。


ファンの誰からも愛される彼女たちの声は、決してただ明るく、可愛らしいというものではありません。


あ~ちゃんの声は満たされない想いに満ちていて、かしゆかの声は不安と自信の無さに揺れ、のっちの声には豊かな才能の行き場を定められない不安定さがあります。


明暗で言えば暗く、軽重を問えば重い。


甘く、切ない歌声に潜むこの陰りが、Perfumeというボーカルユニットを、他のどのような存在からも隔てる鍵となります。


中田ヤスタカさんによって受けるボーカルエフェクトによって、彼女たちの歌声は暗すぎることなく、重すぎることなく、キラキラとして愛らしく、キュートで、聴く者の胸が痛くなるような切なさを強調されることになりました。


Perfumeサウンドの核は、ブニブニのベース音ではなく、尖って妥協しない硬質なスタイルでもなく、あ~ちゃん、かしゆか、のっち3人の歌声です。


中田ヤスタカさんによるサウンドプロデュースがなければ、Perfumeというユニットは早い段階で活動を停止されられていたことでしょうし、結成8年目のアイドルのブレイクという軌跡を描くことも出来なかったでしょうが、そのプロデューサー中田ヤスタカの傑作であるPerfumeサウンドは、3人の少女の、他の誰にも出せないあの歌声がなければ成立しないものなんじゃないか、と僕は思います。


エフェクトを受けたボーカル込みのPerfumeサウンドは、あまりにも完成度が高く、潔癖ですらあり、他のいかなる音楽的解釈をも許容できないレベルにあります。


Perfumeのメンバー3人それぞれによる歌う時の思い入れ、という独自の解釈と、それゆえに生じる歌声の揺らぎさえ許さないほどに。


「PSPS」「TSPS」「ディスコ」。


キラキラとしてキュートなサウンドに満ちたこれらの楽曲にほどこされたボーカルエフェクトは、Perfumeサウンドに恩恵をもたらすとともに、ライブスタイルの固定化、という呪縛にPerfumeを引きずり込むかに見えますが。


「あの三人娘」が、自分たちのライブスタイルの「口パク」による固定化、なんて事態を認めるはずがありません。


次回では、ONになったままのマイクを使って、ライブ会場内の観客を煽り、あおって、煽りまくるライブの女神、我らがあ~ちゃんの登場です。


テーマとなるのはもちろん女神が復権を果たしたPerfumeのブレイク曲


ポリリズム ▽・w・▽