リニアモーターガール


言葉の厳格な定義、はともかくとして、Perfumeを「テクノポップユニット」と考える時、この曲はその最高峰に位置する作品だ、と思ってます。


安易な感情移入を許さない歌詞、メロディ、アレンジ、そしてダンス。


一体なぜ、アイドルユニットのメジャーデビュー曲がこんなふうになっちゃったのか、当時の関係者の胸倉を掴んで訊いて回りたいくらいですね、「本気で売る気があったのか」と。


でも傑作。

売れた売れなかった、で評価されることすら拒むほどに完成度の高い作品じゃないか、と思います。


この曲の魅力の詳しい解説は(eve)3さんに譲るとして(笑、頼みましたよ)、さっそくテキストとしてお聴きください。


…どうです?いい曲でしょう、いやそうじゃなくて、インディーズ期とはボーカルトラックの性質が変わっているように感じられるんじゃないか、と思います。


歌い出しの「リニアモーターガー」をリフレインする部分や、効果音のように歌の背後で使われるコーラス部分は分かりやすく機械的、メロディを歌う歌声からは個性が奪われてメンバーの誰が歌っているかの判別がつけにくくなっています。


歌詞の振り分けは


tiny tiny ハートウィルス 2:30AM. (のっち)


ハイスピード ハイスピード リニアで  (あ~ちゃん)


高速移動な NO!             (あ~、かし)


up to date girl リニアモーターガール


fall in fall in love           (三人)


となっているんですが(被せ生歌で披露された『Bring Back!MUSIC!!』の映像で確認できます)。

曲だけ聴いていて分かります?


Perfumeの誰かの声だな、というのは分かっても、さて誰が、となると非常に聞き分けにくくて、もしかしたらミックスした時にはずっと3人の声が混ぜられた状態だったのかもしれないな、と思うほどです。


ボーカル部分にはあ~ちゃんのわかりやすいビブラートもかしゆかのかすれて分裂する声ものっちの歌声に時折現れる揺らぎ、もありません。


ものさしを当てて紙の上に引いた直線のように真っ直ぐで、テープの早回しのような声にも聴こえます。


おそらく、音源となる歌声にはピッチ補正プラグインの速度調整機能までが使われているんじゃないか、と思われます。

音程を変えずに、歌の部分のスピードだけを若干速くしている、という感じで。


振り付けがまた生歌での披露を考慮しないような独特な動きの連続。


くるくると回り、上体を折り曲げ、膝立ちになるかと思えばすぐに立ち、小刻みな脚の動きだけで移動する。


これでCD音源のイメージを崩さずに歌え、というのはもう罰ゲームレベルの無理難題のように感じます。


それでも、残されている映像を見る限りでは、この曲をライブなどで披露する場合にも、音源を被せた状態での生歌が原則だったようです(bitterの中では音源+生歌くらいになっていますね)。


Perfumeのリップシンクの起源はこの曲にある、と前回に書きましたが、それはこの曲からリップシンクが始まった、という意味ではなく、この曲から始まった中田ヤスタカさんによる独特のボーカルエフェクトの使い方、目的が、Perfumeのライブスタイルそのものにも影響を与え始めた、という意味においてです。


次回では中田ヤスタカさんのPerfumeサウンドにおけるボーカルエフェクトの使い方やその目的、時代による移り変わりなどを考えてみたい、と思います。


たとえば、中田ヤスタカさんが楽曲を提供するアーティストの中でユニット、複数のボーカルが存在するのはPerfumeだけ、とかそんなことを。 ▽・w・▽