広島時代から全国インディーズ期までのPerfumeのステージパフォーマンスを振りかえって考えてみると、条件付ながらそのほとんどで生歌による披露が行われていたことがわかります。
いわゆる「口パク」状態のパフォーマンスは、テレビ出演時の一部や大きな野外イベントなど、ごく限られた場面でしか用いられていなかったようです。
ただ、Perfumeにはステージやテレビ番組以外でもパフォーマンスを行う機会がありました。
プロモーションビデオの撮影において、です。
Perfumeのシングル、そのリード曲では広島時代からすでにPVが制作されていて、そのほとんどを鑑賞することが出来ます(『彼募』だけ未発掘)。
「OMA☆ぺロ」のPVはいかにもなティーンズアイドルっぽい作品になっていて、ちょっと観ていて気恥ずかしい思いをすることがありますね。
全国インディーズ期におけるPerfumeのPVは、「ドーナッツ」をのぞく「モノクロ」「ビタドロ」におけるCGの使い方が、早くも近未来的な、SFっぽい雰囲気を感じさせるものになっていて、「売れないアイドル」のPVにしては非常に凝った作りになっているように感じます。
これらのPVの中で披露されている「口パク」を見てみると、いかにも撮影スタジオに流れている歌に合わせて口をパクパクさせているだけ、といった感じに見える「OMA☆ぺロ」「ドーナッツ」に較べて、「モノクロ」~「ビタドロ」と経験を積んでいくにしたがって3人の「口パク」が、より自然に、本当に歌っているように感じる、というくらいに上手になっていることに気づきます。
「口パク」=リップシンクにも技術みたいなものは必要で、色々な歌手のPVを観ていると、上手な人とそうでもない人がいるようです。
現代においてプロモーション活動にPVは必要不可欠な存在です。
ですから、どの歌手の人でも、ライブシーンでもない限りは、必ず「口パク」を行わなければならないので、基本的にはみなさん慣れていてさほど不自然さを感じることはないのですが、「言葉」に合わせているだけの「口パク」と、しっかりと「歌」に合わせた「口パク」にはパフォーマンスとしての出来不出来に大きな差が生じます。
さらに、それとは別に同じ曲の「PV」と「ライブ」シーンを見比べてみたりすると、口の開き方がちょっと違うことが分かる場合もあります。
Perfumeの場合で言うと、「ドーナッツ」「モノクロ」の時のPV撮影時おける口の開き方とライブにおける口の開き方は違います。
PVの中での口の開き方は、非常にはきはきとした感じで分かりやすいのですが、あの口の開き方では実際に同じ言葉を発音しようとした時にちょっと空気が漏れすぎてしまって発音しにくいんじゃないかな、というくらいにやりすぎているように見えます。
「モノクロ」から、少し抑えされた感じになるんですが(特にのっち)、でもまたちょっと実際の発声とは違う口の開き方のように感じます。
それが「ビタドロ」くらいになると、PVとライブ場面を見比べてみてもそれほど大きな差があるようには見えないくらいに「口パク」=リップシンクが上手になっています。
これには「ビタドロ」制作時からPerfumeの発声に変化が見られたこと、と無関係ではないように思います。
中田さんの許容範囲ギリギリまでは感情を込めようという「力み」みたいなのものが「ビタドロ」あたりから段々と薄れていって、それがPV撮影時の自然な口の開き方、につながっていったんじゃないかな、という気がするんですね、これはまったく個人的な感想にしか過ぎないんですけど。
ただ、このPV撮影時におけるリップシンクも含めると、現在まで約7~8年、Perfumeはリップシンクの経験を積んできたことになります。
それは、現在のライブパフォーマンスにおいて段々とその比率を高めてきた「リップシンクというパフォーマンス」の習熟度と、深く結びついているように思います。
「リップシンク」にも技術があり、その技術には優劣の差があって、「才能」と言ってもよいものが必要とされるとされるんじゃないのかなと思うんです。
Perfumeは多くのライブを通じて「歌」「ダンス」「トーク」の技術を高めていき、PV撮影を通じて「リップシンク」の面でもそのレベルを上げていきます。
その中でも、「リップシンク」という今までのライブシーンでは「口パク」と馬鹿にされ、歌唱力がないことへの誤魔化しでしかない、と評価されてしまう「マイナスのパフォーマンス」を、「激しく踊りながら声を出して歌うこと」という負担から解放されることで、よりステージパフォーマンスのレベルを高める、という「プラスのパフォーマンス」に転化させる才能が開花していきます。
その才能とは。
「女神」と「天使」に守護されしPerfumeの宝石、「リップシンク」の天才のっち、なんですが。
それはまた次々回かその次くらいで ▽・w・▽ノ