浅草橋のネットカフェで一夜を明かし、退出したのが午前8時頃。
8時間のナイトパックの時間ちょうどで出てきて、そのまま浅草橋駅から秋葉原駅方向へ進む。
秋葉原についてもまだ営業を開始している店はほとんどない。
そのまま御茶ノ水駅方面まで歩こうか、とも思ったけどあまりの寒さにびびり電車の中で暖まることにする。
総武線ならすぐに御茶ノ水駅、でも暖かい空気に触れていたかったので山手線で東京駅、中央線で遠回りして御茶ノ水駅。
駅から出て橋を渡って神田明神まで。
行ったところで喪中で参拝はできない。
あくまでお参り無しの見物だけ。
さすがに人出はそこそこあるんだけど、昨年正月に参拝した浅草寺や明治神宮に較べたら(はしごしました)ぬるい。
昨年なんか身動きも出来ないまま足だけをちょこちょこと動かしてペンギンみたいに前に進んでいた。
お賽銭を投げ入れる場所までの長かったこと。
神田明神の短い参道にも屋台が並んでいて、その隙間に揚げ饅頭屋さんが出店を出していたのでそれを親へのお土産とする。
「5日まで大丈夫ですから」
とのことでお土産には最適。
見物を済ませお土産も買って何となく初詣気分は味わえた。
そこから今度は水道橋か飯田橋まで歩くことにして進む。
線路沿いの道まで少し戻り、御茶ノ水坂を抜けて水道橋駅まで。
ここで前に書いたペッパーランチの看板だけを見ることになる。
女の子が駅前にわんさか群れていて、あとでこれがNEWS目当てで集まったジャニーズ系のファンの姿だと知った。
基本的に若い、遠征してきた人も多いようでバッグキャリアーをガラゴロと引きずりながら後楽園ドームシティを目指す人も多かった。
肩身の狭い思いをしながら歩き、やっと一息つけたのがJRAの場外馬券売り場。
そこだけ空気が違う。
平成の時代に現れた昭和の空間、ジャニーズファンが花ならこの場所にたむろするおっちゃんたちは冬枯れのした芝生だ。
安心して彼らの中に入り込める。
まだ午前中10時過ぎくらいだったはず、でも施設の中の食べ物屋は店を開いていて、正月の朝から酒類の売れ行きが半端じゃない。
ほとんど全てのおっちゃんたちが何かしら酒類を片手に競馬新聞に見入っていた。
長い間誰にも解けなかった証明に挑む数学者みたいに、彼らは脳細胞の全てを使って勝負をかけるレースの展開を読んでいた。
眉間にしわを寄せながら、でも彼らはとても幸せそうに見えた。
そんなおっちゃんたちをわき目に見ながら長い階段を上るとそこには別世界、ショッピングモール「ラクーア」がある。
ヴィレバンもあるしABCマートもあるしユニクロもあるし、ちょっと立ち寄ってみる。
家族連れや若い人でいっぱいで、あまりに人が多くてかえって一人でも気軽に商品を眺められた。
グローバルワークでカーキ色のパンツが欲しくなったんだけど手荷物が増えるのが嫌で断念。
今思えば買っとけば良かったかも。
しばらく暇を潰して後楽園駅から東京メトロ丸の内線に乗り、途中で乗り換え日比谷駅を目指すことにする。
日比谷駅付近には間違いなくペッパーランチがある。
が、乗り換えに自信が無い。
霞ヶ関駅あたりで乗り換えればいいんじゃないか、と路線図を見て思うんだけど自信が無い。
近くにいた駅員さんに尋ねると
「赤坂見附で銀座線に乗り換えです」
と、はきはきと答えてくれる。
でも、行き先の駅名がなんか日比谷とは違って聞こえたような気がした。
釈然としないまま車両に乗り込む。
いざとなったら霞ヶ関駅で一度降りて路線を確認すればいい。
そのつもりで座席に座り、そこで暖かさに眠り込む。
うとうととして目が覚めたのがちょうど赤坂見附駅。
やはり駅員さんは僕の「日比谷」という言葉を「渋谷」と勘違いしていたことが判明。
銀座線じゃ行けないんじゃん。
迷う。
数駅戻れば霞ヶ関駅、そこで降りて歩いても日比谷まではたいした距離じゃない。
その時にある柱が見えた。
柱には「豊川稲荷側出口」といった感じの張り紙がしてあって、心が揺れる。
初詣見学に相応しい場所のように思える。
心の揺れ、その振り子は「ここで降りる」というカードで止まった。
降りた。
降りてしまった。
狐に化かされてしまった。
ここから僕は約2時間を無駄にしてしまうことになる。
赤坂見附から新宿駅西口付近まで歩くという企図自体はさほど無理なものでもないらしいと、コメントを読んで理解出来たのはそれから随分後のこと。
僕は渋谷駅方面へ迂回するように遠回りするルートを選んでしまう。
喪中の癖に初詣見学なんかしようとしたバチが当たったのかもしれない (・~・)