19歳のかしゆかは、「20歳になるまでに悪いことをいっぱいしたい」と言い、20歳になったかしゆかは「破目を外します」と言った。
決して叶うことがない夢を語るように。
僕はかしゆかのことを「ストイック」という言葉をキーワードにして書いてみたけれども、それはPerfumeのかしゆかとして、であって、一個人である樫野有香さんがどんな女性であるのかについてはまた別の考えを持っている。
あ~ちゃんやのっちが多面性を備えながらも西脇綾香=あ~ちゃんであり、大本彩乃=のっちであるようには、樫野有香さんはストレートにかしゆかではないのだろう、とずっと考えてきた。
樫野有香さんは、自分でなんとなく自分らしさみたいなものをイメージする前に、「樫野有香らしさ」を自分以外の何者かから与えられてしまったんじゃないかって。
女の子らしく、いい子で、みんなから愛される「樫野有香」。
ただそれを書くことは、あまりにも彼女のプライバシーに踏み込むことになってしまう上に、証拠を見つけられない類の事柄だ。
さすがに古くからのファンのレポートをどれほど漁っても、昔のラジオ番組を聴き返してみても分からないことだ。
うっすらと見えてくるものは、ある。
彼女を縛り付ける愛情の鎖。
肌に食い込む麻縄が女性の身体を緊縛する様が蠱惑的であるように、彼女を縛り付けるその鎖が、樫野有香という女性の二面性を強調して、よりいっそう彼女を魅力的に見せているように感じる。
人に嫌われるのが怖い、というかしゆかと恋の駆け引きを楽しむかしゆか。
必要とされなくなるのが怖い、というかしゆかと、自分を好きになった相手の気持ちが重くなるというかしゆか。
自分の恐れるものが自分に牙を向ける前に、相手へ押し付けてしまうかのように無慈悲。
自分は「ストイック」であり、しかも「自由」だ、という彼女が、小悪魔キャラを演じるのはたやすいことなんじゃないか、という気がする。
悪戯好きの羽根の生えた妖精のように、いつのまにか相手の耳元に近づき、甘い声で囁き誘惑し、振り向いた相手が唇を寄せた途端、針のような鋭い言葉で心を突き刺す。
天使の誘惑と調教は、それを望むものを捉えて離さない。
かしゆかウィルスは、感染者の細胞膜を食い破って侵す。
奔放で自堕落、けれど「ストイック」。
かしゆかの髪の毛が肩甲骨を覆う長さまで伸ばされているのは、そこに生えた黒くて小さな羽根を隠すためだと思う ▽・w・▽