2006年6月28日


エレクトロ・ワールド


発売。


AMAZONには、11件のカスタマーレビューが残っています。


一番古い日付は2006年6月29日、最新のレビューの日付が2008年5月24日。

11件の内容はどれもこの曲を絶賛するものばかり、この曲は多くのPerfumeファンにとって特別な1曲となっています。


PV製作スタッフはおなじみのメンバー、ディレクター 関和亮さん、フォトグラファー ヤベ ヒロユキさん、スタイリスト 内沢研さん、ヘア&メイク 高橋カオリさんに。


この「エレワー」のPVからCG製作を正式にGONZOが担当。

それまでにも、系列の同じオフィスのスタッフがCGを担当することはありましたが、いよいよ本格的に参戦。


チームPerfumeの充実は、その内容をより濃いものにして進化を続けます。


PVは、広がり、奥行きを感じさせる「どこかの街の風景」から始まります。


そのまま視点はパーン

もこもこのリストバンドを着けた右手のアップ

あ~ちゃんの寝顔、目覚める

やや引きの絵、Perfumeのメンバー一人一人が花びらのように横たわって今目覚めたところ

3人が起き上がる

3人バラバラに歩く、背景には人工的な構造物

3人順番に顔のアップ


順番は、首にモコモコを巻いたお嬢様風かしゆか、ロシア貴族のような装いのあ~ちゃん、耳あても可愛い東北地方山間の村にある分校の生徒大本彩乃ちゃん(彩乃ちゃんは木登りとブランコが大好きな活発な少女です)。


驚いたことにダンスシーンに切り替わると分校の生徒のっちがセンターを勤めています。


この曲は広島時代、上京してきてからの全国インディーズデビュー、メジャーデビューと試行錯誤しながら活動を模索してきたPerfumeがたどり着いた成果、来るべき「ブレイク」という未来への足がかりを確かに踏みしめた象徴。


「可愛い」よりも「かっこいい」の要素が大きくなっています。

そして、その「かっこいい」Perfumeのセンターに位置しているのは「エース」のっち。


(少なくともあ~ちゃんの意識の中では)Dクラスの「雑種」でしかなかったPerfumeがASHの中で人気ユニットとしてのし上がり、エリートの座を射止めるまでの間に獲得した宝石、「BクラスのDIVA」、華々しいキャリアを持つ本物のエリート。


安定した歌唱、という点ではあ~ちゃんに適わないものの、ステージ映えするスタイル、パフォーマンス中における集中力、「ダンスのPerfume」の中でさえ別格のキレの良さとうねり。


メジャーデビューを果たしたPerfumeが危機的状況を幾度となく切り抜け、「ブレイク」までの道を歩む過程は、大本彩乃という才能が花開いていくそれと重なります。


才能の開花、そのスウィッチを押したのは誰、或いは何だったんでしょう?


僕は、「楽曲への理解、解釈がより深くなったこと」ではなかったか、と思います。


上京してきて初めて中田サウンドに触れた当初は「あたしたちはこういう歌を歌っていくんだ~」という感想しか抱けず、友達にさえ自分たちの曲を紹介出来なかった、というのはインタビューの際にもよく聞かれるエピソードですよね。


それが、「シティ」から自分たちの曲に愛情を抱けるようになり、初めて自分たちのCDを買うように(おいおい)なった。

「シティ」を好きになったことで


中田さんの音楽もすごい好きになったり、テクノ自体も好きになってきた(by かしゆか bridgeインタビューより)


「シティ」をきっかけにしてメンバー全員の中田ヤスタカという才能への評価が高まり、作品世界をより深く考えるようになった。


Perfumeと中田ヤスタカ、という二つの大きな才能の出会いから現在までの歴史は「戦いの歴史」でもありました。


感情移入して歌い上げたい自分たちの望み、を決して叶えてはくれないサウンドプロデューサー。

中田さんだって、ごく初期のレコーディングの際には誰かしら泣いていたということですから、自分の作品への無言の抵抗みたいなのものは感じていたでしょうし、Perfumeというユニットの自分への評価が(少なくともごく初期には)決して高くはないこと、にも気づいていたでしょう。


Perfumeと言うアイドルユニットの、アーティストとしての側面、自分たちの活動を自分たちでコントロールしたい、と強く望む意志。


中田ヤスタカというクリエイターの「天才のひらめき」と、(何人かのブロガーからの指摘にもあるように)「職人としてのこだわり」。


中田さん側圧倒的有利な情勢で続いたこの双方にとっての憂鬱で冷たい戦争は、「シティ」によって対立構造に終止符が打たれ、「エレワー」によって才能の融合、という新たな局面を迎えます。


エレクトロ・ワールド、可愛くてかっこいいPerfumeサウンド。


解散説まで囁かれていた2006年の初夏の季節、ギリギリのタイミングで生み出され、発表された傑作。


中田サウンドの申し子、Perfumeのエースとしてののっち、大本彩乃覚醒のスウィッチ。


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~続きます▽・w・▽