Puppy love
で、アルバム「GAME」は終わります。
個人的には、アルバム「GAME」は『Butterfly』で1度終わり、『TSPS』と、この『Puppy love』は、ライブで言えばアンコール部分にあたる、と感じています。
昨年大晦日のカウントダウンライブのアンコールが、『SEVENTH HEAVEN』と『BcL』だったように、すでに知られている人気の曲と、新曲を組み合わせたセットリストの終わり。
「GAME」が発売される前、テレビ東京系の番組『みゅーじん』で中田ヤスタカさんが取り上げられた時、このアルバムの製作依頼と合わせて「Perfumeのネクストステップを」という要望を受けたことから、ファンはその内容に注目していました。
で、タイミングよくリリースされる直前に発表された新曲7曲のうちの『セラガ』『シクシク』が、どちらも甲乙つけ難い出来の良さだったことから、俄然期待が高まったのを覚えています。
実際に発売されて聴いてみると、期待を裏切らないどころか期待以上の素晴らしさ。
これ以降製作されるアルバムへの期待、そのハードルはとんでもない高さに設定されてしまったように思います。
このアルバムを超えることは、大変な困難を伴う作業になるだろう、と。
シングルのリード、およびカップリング曲5曲と、オリジナルで新曲が7曲。
新曲のうち2曲は既存路線の発展系(『セラガ』『シクシク』)、3曲はPerfumeの、というよりは中田さんにとっての現在進行形の作風(『GAME』『テクテク』『蝶』)となっていて、残る2曲が。
このアルバムの中ではもっとも地味な印象を受ける『Plastic smile』と、聴くたびに魅力に取り込まれていくスルメ曲、という評価の高まってきた『Puppy love』こそが、Perfumeというポップユニットにとってのネクストステップになるんじゃないか、新しい路線になっていくんじゃないか、と感じました。
『BcL』『マカロニ』『セラガ』『シクシク』『TSPS』といった曲が、今年で全員が19歳になったPerfumeの、ごく等身大に近い年代に相応しい恋愛、今はまだあと一歩を踏み込めないでいるけれども、やがてそれを乗り越え、段々とお互いの関係を深めていき、その過程でより大人としての経験や、時には傷つくこともあるだろう未来を迎えることが予想される内容になっているのにくらべると、特に最後の『Puppy love』は、年齢的にはやや後退しているようにさえ感じられます。
『Puppy love』の中で歌われている恋愛、相手に取る態度、というのは、単に好きな相手に意地を張ってしまって素直になれない、というレベルを超えて、相手次第では深く傷つけたり、怒らせたりしかねない、非常に子供っぽいものに終始しています。
そんな相手の態度に戸惑ったり、振り回されたり、時には苦笑いを浮かべながら付き合ってあげて
キミが好き(何十年かぶりにこんな言葉を書いて、耳たぶがまっ赤っ赤になってます)
なんて言える相手の方が、実は余裕綽々で、よほど大人。
だからこそそんな相手への
絶対的な信頼
が、やがて
ある日恋に変わる(さらに耳たぶが…)
のでしょうし、そんな相手と出会ってしまったことが
絶望的な運命
にさえ感じられるんでしょうけど。
ただ、年齢的には後退したような、子供っぽい、と書いた『Puppy love』で提示された恋愛観には、今までのPerfumeの楽曲にはなかった、相手への、その相手との恋愛に対する「信頼」が含まれているように思いました。
自分の気持ちは間違いなく相手に伝わっているし、相手の自分に対する気持ちも信頼するに足りるものである、という自覚。
ラブラブなわけですよ、このカップル。
ここには、一見大人っぽい恋愛に見えつつも
どれだけ キミのこと 想い続けたら
やわらかい 言葉じゃなくて キミに届く
と、歌っていた『SEVENTH HEAVEN』の中の、絶望的なあと一歩、もしかしたらこのまま永遠に届かないんじゃないか、と感じるようなもどかしさ、はありません。
ある意味、すごくあっけらかんと
キミが好き
と、言い切っているわけです。
留保も、条件も一切無し。
キミの態度はわかりにくいけど、キミの気持ちは伝わっているよ、と言い切れる相手とようやく巡りあえたってことなんじゃないでしょうか。
Puppy love、幼い恋は、幼いがゆえに、曲がりくねってひねくれて、でもちゃんと相手に届く。
そう、今までPerfumeのラブソングの中では届かなかった気持ちが、あと一歩を飛び越えて、ちゃんと相手に届いているんですよね、『Puppy love』では。
素直になれなくても、臆病になっても、それを理解して受け入れてくれる相手と出会えて、全身で愛情を感じ取れる、すごく幸せな恋の歌。
それが、Perfumeのネクストステップになれば、いいな~と思いました。
片想いも素敵だけど、相手と想いが通じてから学ぶことの方が、よほど実りも多いんじゃないかな、なんて思うのもやっぱり親目線なような気がします。
バンド仕様のアレンジに合わせて生歌っぽい加工で来るか、と思えばかなり強めのエフェクトをかけてきたボーカル処理(ヘッドフォンで聴いていると、右側からのっちの声、左側からかしゆかの声、真ん中からあ~ちゃんの声が聞こえてくる部分がありますね)。
べべべべのゴリゴリである『GAME』のボーカル処理がごく生歌に近いもの、とあわせて考えてみると中田さんの中で、音楽の一部としてのボーカル、という今までの認識にも何らかの変化がおきつつあるんじゃないのかな、なんて妄想もしてしまいます。
あとは、このラブリーな曲に、天才MIKIKOさんがどんな振り付けをぶつけてくるのか。
明日から始まるライブツアーを経て、初めてアルバム「GAME」は完成します。
大阪に参戦できる方、親愛なるPerfumeファンのみなさん。
いろいろなことがあっても、ライブだけは、心の底から楽しんでください。
Perfumeが挑んできた「GAME」。
受けて立とうじゃないですか▽・w・▽ノ