質疑(村上委員) 

 

私からは、先般からお話させてもらっている広島県の様々な課題の解決に大変有用なプロジェクトである、サキガケプロジェクトの中にあるセレンディクスによる3Dプリンターに対する質問を行いたいと思っております。
 まず、3Dプリンター住宅に対する需要予測がどうなっているのか、お伺いします。

 

答弁(イノベーション推進チーム担当課長(地域産業デジタル化推進担当)) 

 

建設業界における3Dプリンター導入は、世界的にはここ10年ほど前から始まった新しい領域ですが、その進化のスピードは目まぐるしく、スマーテックという米国の調査会社によると、建設用3Dプリンターの市場規模が2027年に400億ドル、円にして5兆9,000億円まで成長すると報告されております。これは3Dプリンター本体のハードウエア、CADなどのアプリケーション、モルタル、金属、樹脂などの材料が市場要素として含まれております。これにさらに3Dプリンターで造られる住宅などのプロダクトを加えた市場は、いろいろな数値が出ていますが、インドの調査会社の2023年のレポートによると、2030年までに約3,600億ドル、円にして53兆3,000億円に達すると報告されております。

質疑(村上委員) 

 

2027年時点で世界市場が5兆9,000億円です。そしてインドの調査会社でいえば53兆3,000億円まで成長が広がっていくと見られております。そのような中で、日本は地震大国である点、また法規制の点からみても相当厳しいと思います。しかし、この3Dプリンター住宅が世界市場で発展してきている現状や、現在の日本の諸課題など、様々なことを考えると、無視できない存在になることは明確だと思います。
 そういった中で、現在、日本国内の3Dプリンター住宅の市場拡大において、規制緩和等の問題を含めて検討課題などをどのように考えているのか、お伺いします。

答弁(イノベーション推進チーム担当課長(地域産業デジタル化推進担当)) 

 

委員がおっしゃたように、地震の多い我が国では、耐震基準の法規制が厳しいため、3Dプリンター建設の開発、普及は海外に比べて立ち後れている状況です。
 そのため、そもそも3Dプリンター建設に関する技術基準というものがなく、ようやく1年前の令和5年1月に国交省からモルタルを用いた3Dプリンター建築物への対応指針が示されたところで、国内市場はまだまだこれからという状況です。
 市場化に向けては、素材の低廉化や内装の居住性など様々な開発課題を抱えておりますが、その中でも特に現行法上、コンクリート造において義務づけられている鉄筋について、作業工程の3分の2を占めており、早い、安いという3Dプリンター建設の特徴を半減させている状況です。もし無筋構造が実現すれば、人件費や資材のコスト削減による大幅なコストダウンが可能となるため、国内需要の拡大が加速すると予測しております。現在、サキガケプロジェクトでは土木建築局や広島大学、県内の施工協力会社などと連携しながら技術検証支援の準備を進めており、その状況は、また改めて御報告させていただきます。

質疑(村上委員) 

 

3Dプリンター住宅の会社は、いわゆるデータ会社であり、そのデータを世界5か国に同時配信して、世界5か国でこれを作れる仕組みもつくり始めています。今回、広島県の取組が県内事業者との事業連携というコンソーシアム方式で広げる取組である点について、私はすごく有用だと考えております。
 そういった中で、今後、セレンディクスの理念として、30年ローンからの解放ということが定義にあり、住宅ローンによって日本の私たちの働く世代が様々な生活の中で苦難を強いられているというところから、30年ローンの解放を第一定義として目指しております。これから空き家が急増していく現実や高齢者が賃貸住宅に入れないとか、住宅ローンを組めない人たちが日本の中に約4割いるという問題がある中で、これらの方の住宅の問題をどうしていくのか。しかも、今住んでいる住宅がかなり老朽化していて、その老朽化している住宅から立ち退きされた場合、どうなるのかという不安もあるというのが調査で出てきております。こういった様々な行政の課題解決に資すると考えられる3Dプリンター住宅ですが、今後こういった汎用性のある事業にどのように取り組んでいくのか、お伺いします。

 

答弁(イノベーション推進チーム担当課長(地域産業デジタル化推進担当)) 

 

汎用性という観点からは、委員からいろいろな事例を挙げてもらいましたが、3Dプリンター建設は工期の短縮や廃棄物が削減できるというメリットから、熟練大工の人材不足や建築資材の高騰を救済するという革新的な技術です。住宅以外にも公園のベンチや公衆トイレ、集会所などの公共施設への活用、またデザインの自由度も高いといった特徴から、店舗やグランピングなど、まちづくりや観光分野での新たな価値創出への展開を期待できると考えております。
 さらに、委員にも触れていただきましたが、構造設計のデータがあれば、そのデータをあらゆるところにある複数の3Dプリンターに送信すれば、同時に施工することも可能になっています。このように、データ設計、材料の開発・供給、プリンター出力・施工、塗装、防水、内装など、複数の企業がコンソーシアムを組んで成立する事業モデルであることから、新たな市場創出につながるよう、県内のプレーヤーに声をかけていきたいと考えております。

 

要望(村上委員) 

 

最後に私から、まとめてお話をさせてもらいます。これは関係各局にまたがる課題解決に大変有用な事業であるからこそ、広島県が旗を振って取り組んでいただきたいと思います。私が委員のときに、一つ苦言をさせていただいたのですが、帝釈峡のトイレについて、もともとは9,000万円ぐらいかかるというところから、かなり節約して7,000万円ぐらいになっていった。一般管理費、現場管理費など工事に関わる費用以外のところでかなり多くの金額を要するというのが公共入札、民間企業の工事の特徴でもあったりすると思います。
 だからこそ、先ほど言ったような公園のベンチやトイレ、公民館などの場所をどのような形で維持していくのかという問題が出てくると思います。データをセレンディクスが送って、作るのは県内の企業となれば、県内のGDPの促進にもつながっていくと思うので、ぜひともセレンディクスに広島に本社を移したいと思ってもらえるような事業として取り組んでいただくことを要望して私の質問を終わります。