質疑(村上委員) 

 

私からは、現広島FMP開発事業用地に関して質問します。
 今回、離脱の決断をしたマツダの判断について、車の工法に関して、メガキャストと言われるダイカスト技術に、EV車対応で金型工法が一変しており、これによって、いわゆる中小企業や下請企業にも相当影響が出てくることが予測されております。そういった中で、トヨタは、できる限りモーターを造っていくということで水素エンジンでやっていこうとしていましたが、世界の状況はドイツと中国が連携を組んで、EV車の方向に向かっていこうという流れになっています。今、EV車の問題がたくさん出てきていますが、こういった形で経営戦略も大きくかじを切る判断を進めなければならないというのは、目まぐるしく変化する社会情勢では仕方ないと認識しています。東京モーターショーという言葉も、ジャパンモビリティショーという言葉に変わっていったように、国内の自動車産業自体が少子化の問題も含めて大きく変化した1年であり、斜陽産業とさえ言われ始めています。
 マツダの離脱は大変残念ですが、現段階では県外企業である代表法人と地元事業者が連携して84億円という事業を進めようとしています。このような中で撤退するというのは、これから手を挙げる企業や県外企業に対して様々なリスクがあることも考えると、後押しするべきではないと思います。ただ、この資料を改めて確認したところ、先ほども説明していただいたように、12月20日までに資金計画を出すよう厳しく言われていますが、改めて、県としてどのように進めていこうとしているのか、お伺いします。

 

答弁(観光課長) 

 

初期投資額84億円という大規模な事業の実現において、資金計画は大きな影響を与えるものであると認識しています。そのため、事業予定者から新たな資金計画が提出された後は、ファイナンス分野の専門家から意見を聴取し、県として承認の可否を判断できる程度の具体性を備えたものであるかどうか、慎重に判断していきたいと考えています。
 また、資金計画以外の内容については、この資金計画の提出を待つことなく、例えば、新たな観光名所として集客が期待できるコンテンツとなっているか、開業後の賃借期間中、安定的な運営が見込めるかといったにぎわいの創出や事業の実現性、継続性などの観点から、テーマパークやマーケティングの知見を有する専門家等から意見を聴取し、必要に応じて、事業者に対して、事業実施計画の修正や追加資料の提出等を求めていきたいと考えています。

 

質疑(村上委員) 

 

主力であるマツダが抜けるにもかかわらず意欲的に進めていくという姿勢は、県として寄り添って支えていく体制と意思を持っていることを示すために必要だとは思いますが、一方で、判断するに当たり、これまでの公募資料を見ると、広島県と広島市の総合計画ばかりが参考資料になっています。将来の航空需要予測やホテル需要などを含めたデータを考慮した上で、承認の可否をすべきではないかと私は思っています。なぜなら、年間で約200万人近くの人たちが来るというのは、かなり大変な事業になるからです。正直、広島県と広島市の資料では、全然心もとないと私は思っています。例えば、関西国際空港の将来航空需要予測に関する調査委員会の中間報告書を見ると、2018年に2,941万人だったのが、これから2025年度にかけて3,733万人という大幅な需要予測が出ています。この予測では国内旅行客は微増になっており、国内需要ではなく、外国人需要とどう向き合っていくかがこれから大切だと思います。私は今日も新幹線で来ましたが、外国人が本当にたくさんいます。ここからまだまだ外国人が増えてきます。この状況をしっかりと考えてもらいたいです。
 新関西国際空港が示している2030年度の前提条件の概要によると、基本と中位と上位ケースに分かれており、総旅客数は基本ケースで3,889万人、中位ケースで4,539万人、上位ケースで4,966万人になります。つまり、あと7年後にはそういったニーズになっていくことが予測されているのです。
 また中位、上位ケースは、航空ネットワークの拡充で新規路線の開設を想定して設定されており、実際に韓国の第一航路を広げていくことがもう決定されています。2027年までに、4,300万人ぐらいまで増えていきます。今から約1,000万人ぐらい増えていくのです。この現状を考えたとき、ここを予測して事業を立てていかないといけないと思います。
 さらに言えば、静岡県知事があのような状況では難しいとは思いますが、2027年には、東京-名古屋間でリニアモーターカーが開通する予定です。こうなると西日本では外国人対応がかなり増加し、新幹線が人でいっぱいになります。リニアモーターカーで東京-名古屋間はクリアできたとしても、福岡あたりまでリニアモーターカーが敷設されるのは2045年とも言われています。こういったことを予測して考えると、西日本の空港の重要性がまだまだ上がり、空港の経営もしっかり見詰め直していかないといけないことが予測されます。また、このような社会インフラの大きな変化に伴う予測を想定した数値を提供していくべきだと思います。
 現広島FMP開発事業用地の利活用の募集要項の参考資料なども、大きな変化をしっかりと捉えていかないといけません。そのため、事業実施の計画案の承認の可否の判断に当たっては、特に関西国際空港を含めた交通インフラの需要予測なども加えて検討していく必要があると思うのですが、どのように考えているのか、お伺いします。

 

答弁(観光課長) 

 

事業予定者において、インバウンド客を含め200万人の集客を目指す実施計画になっており、関西を含めた広域からの誘客も大変重要だと認識しています。このため、事業実施計画案の承認の可否の判断に当たっては、今後の関西国際空港等を含めた交通インフラの需要予測、あるいはそうした交通需要などから見込まれる国内外の観光需要なども踏まえて、先ほど答弁したテーマパークやマーケティング、観光分野の専門家等から意見を求めて、必要に応じて、事業実施計画案の修正を事業予定者に求めていきながら、検討を進めていきたいと考えています。

 

意見・要望(村上委員) 

 

先ほども言ったように、広島県と広島市の総合計画だけを参考資料に渡して、200万人規模の事業を成立させるのは相当難しいと思っています。私が議員になってから5年間言い続けていますが、マーケティングの見直しが本当に必要だと思っています。
 まず、ビジネスというのは常にウォンツではなくてニーズが必要だと思っています。私はこの観点で全てのビジネスを見ています。
 東南アジアのシンガポールでは、世界の工場を誘致するために、公用語を英語にしました。そこで管理者が増えて、住んでもらい、人口が増えてどうするかといったら、処罰を厳しくしました。ごみを捨てたら50万円の罰金にしたり、死刑も連発しました。その結果何が起きたかというと、治安がよくなり、人が住めるようになりました。人が住めるようになると、富裕層の人たちが住めるようになった。そして、金融市場を見詰めて、金融ハブをつくっていった。そしてIR、カジノなど遊ベる場所をつくっていった。要するに、段階によって何がニーズになるかが、すごく重要だと思います。
 今、世界で様々な問題が起きており、原爆の問題やG7サミットなどに注目が集まっております。先日、北海道の視察に行った際にも欧米の方に来てもらえるようにしたいという話を聞きました。広島県にもたくさんの欧米の方に来てもらっています。先日、私は日本政策投資銀行資料を見たのですが、2026年に関西2府4県におけるラグジュアリーホテルの需要予測で供給客室数が3,273室、需要客室数が4,585室になっており、需要に対して供給が圧倒的に不足していることが分かりました。
 こういったことを考えたときに、現FMP事業用地の西側にある広島西飛行場跡地の利用計画図には、新たな産業にぎわいゾーンの導入施設の例として、職業・ものづくり体験パビリオンなどがあり、リゾートホテルが1個書いてあるだけです。修学旅行生なども含めると、どう考えても、ホテルがかなり必要となってくることは明白です。だからこそ、まず本当に今、この広島県において必要なことをしっかりと把握して進めていただきたいと私は思っています。
 特にあの地域は交通インフラもあまりよくない中、今までの数値などフロントキャストで考えるのではなく、未来の数値に基づいたバックキャスト思考でこの事業を改めて見詰め直していただきたいと思っています。今回の説明でありましたが、このまま進めていくのも大変重要です。しかしながら、200万人呼ぶという現実を考えたときに、これから本当に必要なものが何なのかということも含めて、慎重に考えて進めていただきたいと思います。