質疑(村上委員) 

 

先ほどのひろしまユニコーン10についてお話を聞いていて、ひろしまサンドボックスの中の幾つかのプロジェクトのうち、サキガケプロジェクトについて私もいろいろ調べたのですけれども、大変面白い企業が集まっております。特に、今後、高齢化社会で眼科に関する受診コストの課題を解決するMITAS Medicalや、小型EVD船の自律航行と海上交通DXとしてニュースにもよく出てくるエイトノット、今度の万博でも3Dプリンター住宅を建設するという話も出ているセレンディクスなどです。今回のサキガケプロジェクトの目的と現状と成果を教えてください。

答弁(イノベーション推進チーム担当課長(地域産業デジタル化推進担当)) 

 

サキガケプロジェクトは、先端技術の実装に向けて、現行の法制度や業界ルールが障壁となっているチャレンジへの支援を行うもので、具体的には、国への提案活動や県内プレーヤーとのマッチングなどを行っており、現在、県内外7社のスタートアップ企業が広島をフィールドに活動を続けております。
 その目的は、第一義的には、人口減少や高齢化などに伴う地域課題の解決です。例えば、先ほど御紹介してくださったスタートアップ企業で言いますと、MITAS Medicalは、専門医の偏在という課題に対し、地域医療機関が導入しやすいスマホ接続型のコンパクトな機器によるオンライン診療を実現し、地域医療の向上を図るものです。また、エイトノットは、離島航路の維持や船員の高齢化という課題に対し、AIによる自律航行システムでアシストし、ヒューマンエラーによる海上事故にも対応していこうとしております。
 成果としましては、これらのサービスを市町や医療機関が順次導入しており、県内実装の横展開が図られてきていることと、さらには、エイトノットについては、大阪の企業なのですが、無人航行に向けて開発を本格化するために、このたび広島オフィスを開設し、共同研究を行っている広島商船高専の新卒学生を採用するなど、地元雇用にもつながっています。
 このように、その先の目標としましては、広島県が勢いのあるチャレンジャーの活動拠点として選ばれる地域になっていくよう、人材と企業の集積の好循環が生まれるイノベーション・エコシステムの形成を目指してまいりたいと思っております。

質疑(村上委員) 

 

今、ひろしまユニコーン10として広島からユニコーンに匹敵する企業を10年間で10社創出すると資料に記載されているのですけれども、正直、MITAS Medicalのスマホ接続型デバイスによる眼科オンライン診療、エイトノットの事業内容は、いわゆるユニコーンといえば年商10億ドルとなるので、1,500億円の企業となるには、すごく遠い事業内容だと思うのです。しかし、年商1,500億円を目指すぐらいの熱い思いがなければ、先ほど申されたような国の岩盤規制を乗り越えるのは難しいと思うのです。だから、彼らの事業スキームは年商ベースではなくて、日本の未来に必要な事業だという観点も必要で、先ほど課長が最初に言われたように、地域課題の解決というところは、すごく大きな観点だと私は思っております。
 そこで、実際にイノベーション推進機構というファンド事業があると思うのですけれども、開始から現在まで、どのようになっているのか、お伺いします。

答弁(イノベーション推進チーム担当課長(イノベーション環境整備担当)) 

 

本県のファンド事業につきましては、平成23年度から開始しており、現在十数年が経過しているところです。この間、本県としては、1号ファンドに40億円の出資をしております。その40億円を基に、機構から7社に投資して、そのうち投資を完了している6社について見てみますと、投資前と現在の雇用者数では約460人増えている状況、そして、投資前と現在の売上高を見てみますと、約107億円の売上増になっている状況です。

 

意見・要望(村上委員) 

 

今の御説明でもありましたように、すごくすばらしい結果だと思うのです。ただ、先ほどお話ししたユニコーンのように単体で1,500億円となると、プロであるファンド企業でも、現状は10年でほぼ100億円で、日本の今の市場では限界かと感じております。
 日本のファンドだと、はっきり言って数百億円というのが限界で、1,000億円規模となると世界で闘わないといけないのが現状だと思うのです。そこで言えば、3つ目に僕がお話ししたセレンディクスは、3Dプリンター住宅の会社なのですけれども、ここは大きな可能性があると思っています。私は開発責任者の飯田さんとも交流があるのですけれども、セレンディクスは施工業者ではないのです。要はシステム開発の会社で、幾つかの国とも既に連携していますし、施工業者とも200社以上、業務提携を結んでいる。既に契約も1,000件以上取っているような状況の中、セレンディクスの3Dプリンター住宅は、今は住宅に特化していますけれども、1,000億円企業の可能性として、一番可能性があると思っているのです。
 というのが、汎用性があって、今、皆さんの地域でも公衆トイレがかなり老朽化して臭いもひどくなっているという現状があると思うのですが、以前調べたところ、吹田市のトイレは小さいトイレで1,500万円近くするのです。大きなトイレになったら二千五、六百万円ぐらいするのです。これに対して施設管理費が大体1割ぐらいかかるので、それが150~200万円近くかかるような現状の中で、こういったトイレだとか、公民館、拘留場などといったところも、かなり老朽化が進んできています。こういったところの要望は、23市町からかなり出てきているはずです。セレンディクスは、今は住宅に特化しているけれども、広島県のベンチャー企業などが事業提案をしっかりとやって、全国に広がっていくと、絶対に1,000億円以上の仕事になります。だからこそ、こういったところを広島県がしっかりと押し上げていく必要があると思っております。本社移転してもらうための戦略も同時に必要だと思います。要は広島県がつくるベンチャーも必要ですけれども、外から来てベンチャーに育っていく。その上で一番大切なことは、先ほど課長も言われていたように、挑戦する土壌だと認識しております。
 実際に私もいろいろな起業家の人と話をすると、担当者が替わって全然動きが悪くなった、遅くなったという話をよく聞くのです。スタートアップ10のところで、スタートアップフレンドリーという、挑戦する全ての企業を対象として起業経験のある知事とスタートアップの活動を応援する職員が全力でサポートしますとあります。要は何かと言ったら、職員の異動が一番ネックなのです。ただ、職員が、事業を理解していて、国との岩盤規制を一緒に突破していくということ、一緒に押し上げていくということ、ここの支えがすごく必要だと思っています。やはり結局、最後は人だと思うのです。
 だからこそ、国家戦略特区の中で超えていくというのではなくて、広島県が企業の意思を聞いて、国に対して岩盤規制を超えていく、挑戦する姿というのは、県議会としても支えていくべき大切な事業だと私は思っております。ただ国は、人の生命と財産に少しでも危害が及ぼされるものでなければなかなか動きません。だから、少し時間もかかっていくものでもありますから、先ほどの人の問題も大きく議論していただきたいと思っております。
 最後に、私のまとめの話になるのですけれども、広島県だと安心して挑戦できるという企業にやる気をもたらし、新しいことに挑戦できる土壌、文化の醸成というものを広島県一丸となってブランディングしていくことで、自然と工業のまちから若者が定着する企業へのまちと変貌していくことが、流出を防ぐ最大のブランディングだと思います。
 先ほど言われたように、商船高の生徒に新規採用で働いていただく、こういうふうに職業の選択をつくる、これが豊かさだと思うのです。ただたくさんお給料が入ることが豊かさではなくて、職業の選択があるという広島県をつくっていく。特に若者の流出がワースト1と言われている広島県ですから、職業に選択肢を持たせることをしっかりとやっていく意義のある事業だと思っております。ぜひとも、まだまだ始まったばかりですので、このスタートアップ広島というブランディングをしっかりと構築できるように、職員一同、そして、私たち議会としても支えていくような事業にしていただければと思っております。