質疑(村上委員) 

 

先ほどの説明にもあったように、元交際相手への暴行容疑で20歳の警察官が現行犯逮捕された件で、質問させていただきます。
 現職の警察官が逮捕されるという事態は、県民の警察に対する信頼を著しく損なうものであり、断じて容認できないことであります。一方で、今回の逮捕は交際絡みといったプライベートの問題で発生しており、また警察官が20歳という若い世代であることを考えたときに、警察の組織として指導が不十分であると一概に非難できないものであると私自身思っております。今後、同様の事態を招かないためにも、職員に対する指導は欠かせないと思いますが、警察官は、皆常に命の危機、そして様々なストレスを抱えられている職業でもあります。そういった中で、高い規律と精神状態を保つために、職場での厳しい関係性が強いられているのはよく耳にするところですし、職業柄、自分の身辺をきれいにしておかなければならない立場にあるわけです。規律を維持するためには、とりわけ若い警察官に対しては厳しく、きめ細やかな指導が求められていると思います。今回の事案を受けて、警察学校でも再発防止に向けた指導があると思いますが、新任研修の場において、警察官としての職業観を養うためにどのような教養が行われているのか、お伺いします。

 

答弁(警務部長) 

 

御指摘の暴行事案につきましては、警察官としてあるまじき行為であるということで大変厳粛に受け止めております。
 質問があった警察官としての職業観を養うための教養については、一般的に新任研修という警察学校等における採用時の教養等を含め、あらゆる機会の教養の場を通じて積極的に推進しております。
 具体的には、警察官の職務理念の基本として5つの項目を定めております。まず1点目が、誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕する。2点目が、人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行する。3点目が、規律を厳正に保持し、相互の連帯を強める。4点目が、人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努める。最後の5点目が、清廉にして堅実な生活態度を保持するという5つの項目を掲げており、これらの5つの項目を、警察官の仕事とプライベートの公私にわたる行動の規範とするように指導しております。
 これらの指導のほかに、職場において職務を実際に遂行しながら、職務に関する知識や技能を高めるための指導を実施しております。例えば、日常の仕事を通じて行う個人指導の実施、具体的な事例に基づく小グループでの討議、職員を全員集合させて行う集合教養の実施、あるいは所属長、警察署長等の幹部が自らの経験や思いなどを語る講演会や有識者の講演の実施など、職員相互の倫理観の共有と高い意識の涵養に努めて、県民の期待と信頼に応えるよう指導しております。

 

質疑(村上委員) 

 

いろいろと説明いただきましたが、同じような指導教養は、警察学校を卒業した後も、職場の上司や先輩から受けるものと思います。そして、その時々によって伝えられる言葉が一番心に響くと思いますが、やはり世代間ギャップや価値観の違いもあり、若手職員の指導において、ハラスメントの境界線が引きにくくなっています。例えば、自衛隊では以前、若い自衛官が暴発して乱射したという事件もありました。特にプライベートに係る領域については、踏み込んだ話も必要となってくると思いますが、県警察が若手に対してどのような指導をされているのか、お伺いします。

答弁(警務部長) 

 

まず、警察職員につきましては、若手、ベテランに関わらず、プライベート、私生活で非違事案を起こした場合は職務の執行に与える影響が非常に大きいことから、あらゆる世代の職員に対して、各種の非違事案の防止対策を継続して講じております。
 また、各所属において、全国の他県の警察職員による非違事案を題材とした討議を行ったり、県警察本部の監察官室が発出する各種教養指導資料を活用して職員に対して指導を行うなど、様々な機会において、指導教養を行っているところです。
 また、非違事案を防止するためには、身上把握が重要であると考えており、例えば春の人事異動や、警察学校を卒業したときに、幹部職員が部下職員と個別に面接して、身上把握に努めております。その際、特に非違事案に結びつきやすいと思われる金銭関係や飲酒関係、異性関係、また、ハラスメント関係の4項目について、職員のプライバシーにも配慮しつつ、一方で、一歩踏み込んだ具体的な内容を聴取して、その聴取内容に基づいて、継続的に指導するといった形の体制を取っております。
 また、こういった定期的な幹部職員による面接以外にも、あらゆる機会を通じて身上把握をするように努めており、把握した内容を組織的に共有し、指導や支援に活用して、各種非違事案防止に努めております。
 委員の御指摘のとおり、職員の抱える悩みなどは、実は若手、ベテランといった世代により異なる場合が多くあります。こうした世代の差にも十分配慮しながら指導するように体制を組んでおり、先ほど申し上げた一歩踏み込んだ指導については、職員からするとプライバシーの領域に入ることもありますが、県民の皆様からの信頼を守り、かつ非違事案により職員を不幸にさせないという、指導する側の幹部職員の熱意が何よりも大事であると考えております。幹部職員には世代によるいろいろな差というものを考慮しつつ、対若手、対ベテラン関係なく、熱意を持って、身上把握に当たるよう指導しております。

 

質疑(村上委員) 

 

説明については分かりますが、私自身もインターン生などを通して、若い世代の感覚は全然変わってきているとすごく感じています。以前私が、2年ぐらい前の委員会で質問したときに、ストレスチェックなどもしているとのことでしたが、ストレスチェックをしたところで、業務もかなり立て込んでおり、その後何か指導が入るのが面倒くさいから、適当に書くというのが実際にあると思うのです。そのような状況下で、他県の報道では警察官による拳銃の自殺が時折発生しているようです。市民の命を守るための拳銃が、自らの命を絶つために使われていることに大変強い危惧を持っています。先ほどの資料にもつながる話ですが、警察官は職業柄、異性関係の問題や、借金などの経済的な問題を上司に相談しにくい環境ではないかと心配しております。こういった問題を抱えた職員に対して、どのような精神的なケアを施しているのか、お伺いします。

 

答弁(警務部長) 

 

まず基本認識としては、良好な治安を確保するために、職員が後顧の憂いなく職務に邁進できる環境を整えることがとても大事であると思っております。このような方針の下、先ほど説明したような、幹部職員による個別職員の身上把握や指導を行っております。これらは業務として行っているものですが、もう少しソフトなアプローチもしており、ピアサポート制度、ピアは同僚とか仲間という意味のピアですが、こういった制度を設けております。各職場において、一定の職員を指名して、彼らをピアサポーターとしており、公私にわたるいろいろな課題、問題について不安を抱える職員からの意見の傾聴、またはその職員やその家族からの相談を通じて、職員が抱えている問題の早期解決に向けたアドバイスなど、能動的に支援する体制を取っております。
 県警察内の全ての所属において、人生経験豊かな職員をピアサポーターに指名しており、具体的には、家族や親族に関する相談や健康に関する相談、育児や教育に関する相談、また異性問題や経済問題への相談を実施しております。
 専門的な知識を必要とする各種の生活相談に対応するために、ピアサポーターのほかにも、部外カウンセラーという弁護士や司法書士を委嘱しており、部外カウンセラー以外にも、24時間電話対応する健康相談の窓口を設けるなどして、体制を整えております。

 

要望(村上委員) 

 

今回の事態において、再発防止に向けた取組をいろいろと進めていくことを今お伺いしました。しかし、先ほど確認したとおり、考え方や取り扱い方については世代間ギャップが大きく存在すると常に思っております。この問題に対する、工夫や視点についてどこの業界も今すごく困っており、伝えすぎて辞めてしまうということも起こっているので、そこについてはもう少し研究していただきたいと思っています。
 また、警察組織は災害や重大事件があったときに備えて、一定要員を確保しておく必要があることから、ほかの官庁や事業所に比べて、平素の組織管理が厳しくなっています。要するに、休日にどこに行くかまで把握する必要があることを私もよく耳にしています。県警察職員の家族が、何もかも全部管理されるというところで、ストレスがかかっている気がします。
 家族が相談連絡する仕組みがあるとも聞いておりますけれども、もちろん、組織として共有せざるを得ない情報は絶対あると思っていますし、そこで相談しにくいなどの問題が上がってくると思います。特に以前あった8,000万円の事件のように、大きな話になればなるほど、なかなか表に出てこないということになると思うのです。
 そこで、生成AIであるChatGPTを活用してみてはいかがでしょうか。警察庁が全国の事例をデータ化して、チャット化してChatGPTで開示することで、一つの相談事を書いたときに、他にどのような事例があるかということが示される。こういったことを広島県から警察庁に要望を出すことができれば、すごく大きなツールになっていくと思います。
 新しい時代の相談対応窓口は、ChatGPTが大きな割合を占めてくると思っております。問題を引き起こして不幸になる職員が一人でも減っていくことが必要であり、また、職員一人一人が悩み事を抱え込むことなく、仕事に励むことができる体制を作り、県民の信頼に応えていただくように要望して、私の質問は終わります。