質疑(村上委員) 

昨年の都道府県別における広島県の出生率は全国を上回っていますが、女性の労働参加率は全国を下回る結果でした。なお、都市部は出生率が低く、労働参加率が高い傾向にある一方で、地方は出生率も労働参加率も高いという傾向にあります。このように都市部と地方で傾向が分かれることから、広島県においても、広島市と中山間地域での傾向は異なると推測され、今後、県が人口減少対策を県が検討する際に画一的なものでは有効性が低くなるのではないかと思っています。
 また、今ある制度の中をどのように周知していくのかということが、一つの基本的な政策の主題になっていくと思っています。
 さて、2020年に文科省が公表した地域社会の現状・課題と将来予測の共有についての中に、20~24歳における都道府県人口移動で広島県は転出超過が最も多い県でした。その都道府県別の高卒者の大学進学先では、他県からの進学者が少ない状況で、大学進学時の都道府県別流出数では、岡山県ではプラスですが、広島県はマイナスとなっております。そこで、質問ですが、県内の大学卒業生の県内就職率、県内高校卒業生の県内就職率、進学率の状況と、これらを基に人口移動の多い20~24歳における転出超過を分析しているかお伺いします。

答弁(雇用労働政策課長) 

 

就職率、進学率についてお答えいたします。県内大学の県内大学生の県内就職率については、広島労働局の調査によると、令和5年3月の卒業生で47.6%となっています。また、高校生の県内就職率については、文部科学省の学校基本調査によると、令和4年3月卒業生で全就職者数2,806人に対して県内での就職者数は2,469人、88%となっています。一方、県内の進学率ですが、大学等への進学者数は1万5,597人に対し、県内大学への進学者数が8,293人、率にして53.2%となっています。
 次に、人口移動の多い20~24歳の転出超過の原因については、大学生の新卒就職が主な要因であると考えており、特に配付資料13のグラフが示すとおり、平成29年頃から転出の数が増えている傾向にあります。これは、首都圏の企業が広島など地方で開催されます合同説明会などに参加するといった、地方での採用活動に力を入れ始めた時期と一致しており、また、ここ数年の期間で、採用活動でのオンライン化も進んでおり、これらの採用手法の準備に遅れた県内企業が学生との接点を持てなかったといったことも一つの原因ではないかと思っております。早々にオンライン対応しました首都圏の企業との接点が拡大した点もこの転出の要因となっているのではないかと考えています。

 

要望・質疑(村上委員) 

 

私の周りでもいい人材を探している県内企業の声が集まっており、新卒採用へのニーズが高まっていると思っています。
 人口減少の波が首都圏に出始め、待ったなしの状況になってきたのではないでしょうか。首都圏の企業においても、待っても優秀な人材が集まるという認識が変わってきたからこそ、オンライン化を進めるといった新たな手法を取ったのだと思います。県内企業でこれらの対応が遅れていることは、政策としてかなり大きな問題だと思いますので、ここに対する対応をしっかりやっていただきたいと思います。
 次に、社会問題になりつつある奨学金制度について質問します。県内外の大学生が県内企業の就職に関する取組について説明がありましたが、人口減少対策において、私はUIJターンという、いわゆる人材を県外から誘致促進事業より、県内に現段階でいる人材の流出を防ぐほうが簡単と思っています。
 そこで、人材の流出を防ぐ取組の一つとして、奨学金の返済支援についてお伺いしたいと思います。まず、奨学金制度の実態について、県内受給者や滞納状況はどうなっているかお伺いします。

 

答弁(雇用労働政策課長) 

 

令和4年度における日本学生支援機構のデータによると、日本学生機構から給付・貸与している県内の大学・大学院生の数は2万8,098人となっております。県内の学生数の全体の45.7%に当たる人数でございます。
 なお、滞納数については公表されていないため、把握しておりません。

 

意見・質疑(村上委員) 

 

滞納数については、機構に確認し、学生の状況を県としても把握することが重要であると思います。
 最近では、奨学金の返済が負担となり、結婚や子供が考えられないという声も聞こえておりますので、国もいろいろな施策を講じていると思います。以前、広島県の施策で、奨学金返済支援を人材確保の手段としている県内企業支援について伺いましたが、周知が十分にされていないと思っています。
 そこで、県の支援制度の内容と近隣他県の同様の支援状況についてお伺いします。

 

答弁(雇用労働政策課長) 

 

奨学金返済の支援導入応援補助金について回答します。こちらの制度は、企業自らが魅力的な就職先として若者から選ばれる取組を実施することが人材確保、定着につながるとの考えから、従業員の奨学金の返済を支援する制度を設けていること、そして、働きやすい環境整備に取り組んでいることの2つを条件とする企業向けの助成制度として平成30年に創設し、令和4年度までの5年間で125社に活用していただいています。
 なお、他県の状況については、同様の企業支援型の奨学金返済支援制度を広島県のほかに、古い順に、兵庫県、京都府、岡山県、群馬県、奈良県、埼玉県、沖縄県、長野県の計8府県が導入されております。

 

質疑(村上委員) 

本制度の県の助成内容及びメリットについて、多くの県内企業が把握し、活用することが重要と思いますが、県内企業に対する奨学金返済支援制度の周知をどのように進めているかお伺いします。

 

答弁(雇用労働政策課長) 

この制度の認知度については、県が県内に本社、支店を有する企業2,500社に毎年実施している職場環境実態調査の令和4年度おいて、4割を超える企業が奨学金返済支援制度を認知していないという結果が出ており、まだまだ周知が不十分であり、周知の必要性について認識しています。
 奨学金返済支援制度を導入した企業の従業員や事業主の声など導入するメリットを紹介することで関心を高めることは、制度導入のインセンティブとして導入企業データバンクを公表し、県主催の合同企業面接会への優先参加などにより、導入を促進していますが、今後も引き続き周知に努めてまいりたいと考えております。

 

質疑(村上委員) 

職場環境実態調査において選定される2,500社の選出基準についてお伺いします。

 

答弁(雇用労働政策課長) 

こちらの調査の対象は県内に本社、支店を有する従業員数が10人以上の企業から無作為に選んだ2,500の事業所を対象としております。

 

要望・意見(村上委員) 

 

10人以上ということですが、10人以下の零細企業も相当数あるため、ここに対する対策もしっかりと考えていくようお願いします。
 さて、私は本委員会の委員として、どういう視点で進めていくか考えました。国はコンパクトシティー化を掲げ、人口減を想定した地域づくりを考えている一方で、人口を増やす政策にも取り組んでいる状況であり、私は人口対策におけるあらゆる政策が過渡期にあると思っています。人口流出問題には東京対地方のみならず広島対周辺県という構図もあります。そこには競争ではなく、連携という道もありますが、東京が地方に対して、人材を確保する方向で動いている以上は競争という方向性でかじを切るべきだと思っています。
 そのため、私は3つの視点から政策をしっかりと検討する必要があると思っています。1つ目は地元企業が選ばれるための政策、2つ目は先進事例を参考にした政策、そして3つ目が経済的負担軽減の政策です。
 この1つ目の現状の地元企業の政策は今までの質問で話をした内容です。2つ目の先進的事例における例として、ソフトバンクが行ったコンビニエンスストアの飲料ケースにおける実証実験を挙げます。同社ではロボティクス技術を活用し、遠隔操作を遠隔で補充する実験を行いました。これは2025年に団塊の世代とミレニアム世代の労働人口の逆転に備えたものであり、こういったサービス業への新しい技術の導入といった取り組みを政策として、広島県が積極的に関わるべきと思っております。
 3つ目の経済的負担軽減の内容として、住宅ローンの解放を1つの事例として挙げます。先日、セレンディクスという会社を訪問しました。同社は県の補助金や国の特例制度を活用しながら、3Dプリンターによる住宅製造のオートメーション化によって低コストでの販売を目指しております。低コスト化することによって、住宅ローンから解放され、生活の負担減のみならず別の消費拡大にもつなげるという好例となりますが、このような経済的負担を軽減するための政策について積極的に取り組む必要があると思っています。
 これらの3つの視点から、人口減少対策の質疑を皆さんと深めていきまたいと思っておりますので、よろしくお願いします。