『中国経済 日本化のワナ』

『中国深まる地方財政難』

『中国の不動産 地方財政打撃』

『中国恒大グループ破産申請』

『中国衰退の管理』

『経済苦境が中国政府をより強硬にする側面』

 

『中国経済 日本化のワナ』

 

・中国が不動産バブル崩壊を機に長期停滞に陥った日本の二の舞を演じるとの見方だ。
若年層の5人に1人が失業し、大卒の宅配配達員が珍しくない。
・地方政府財政は軒並み火の車でコロナ対策支出が嵩んだ上に有力な歳入減だった国有地使用権の売却が急減した。

・中国GDP官民合わせた総投資比率は20年近く40%超え続け民間消費支出を上回ってきた。有望な投資先には限りがある。習近平政権になり成長率はほぼ右肩下がり、企業・家計・地方債務は急膨張した。
・投資頼みに変わる成長パターンを編み出さない限り、中所得国の罠につかまりそうだ。

 

『中国深まる地方財政難』

 

・中国地方政府は隠れ債務1100兆円を超えた。コロナ禍の3年で1.5倍にまで増えた。景気を下支えするインフラ投資や地方政府緒歳入不足を補うため土地購入を増やした為だ。

・中国国務院も前払い費が歳出の10%を超えた地方政府に財政再建を指示する仕組みを設けている。22年に警戒基準に達したのは財政データが利用できる205都市の5割に達した。21年時点では3割だったが多くの都市で利払い費が上昇しある都市では100%を超えている。

・中国の土地は国有で地方政府が入札を通じて不動産開発企業に土地の使用権を売る。

売却収入は20年に初めて地方税収を上回ったが22年政府の不動産規制で落ち込み45%減少した。

 

『中国の不動産 地方財政打撃』

不動産関連の国内総生産GDPに占める比率は3割に及ぶ。1990年代末は1割未なんだったが存在感を高めてきた。

2020年には金融緩和であふれたマネーが住宅価格を押し上げた。
中国政府はバブル抑制のために21年に不動産関連金融規制を強化した。

 

ゼロコロナ政策に伴う景気停滞も重なり市況は一気に悪化した。

不動産投資は22年に前年比10%減り23年に入っても落ち込みは続き前年同期より7.2%少ない。中国の土地は国有で地方政府はマンションを建設する開発業者に国有地の使用権を売る。この売却収入は税収に並ぶ主要な財源だが不動産市場の低迷に伴い大きく減少。

 

『中国恒大グループ破産申請』


・破産法15条は外国籍を対象とし適用により訴訟や差し押さえを回避して米国内の資産を保護できる。12兆円を超える恒大有利子負債のうち米ドル・香港ドルで27%
・大手債務総額は200兆円を超える。恒大経営危機が表面化したのは21年夏22年末で48兆円の負債総額となるが手を拱いているうちに最大手のカントリーガーデンホールディングスは23年1~6月で1兆円の赤字になった。

・不動産不況は7月主要70都市のうち49都市で新築住宅の価格が前の月より下落した。住宅が売れないと家電家具だけではなく、マンション建設が止まり建材生産も落ち込む。
人口減が始まり、不動産頼みの経済はやがて行き詰まる。
・新たな成長エンジンを育てないといけない時に民営企業の締め付けを強めるのは理解に苦しむ。若年失業率の発表を停止するなど、透明性の低い政策運営も相変わらずだ。
・カントリーガーデンホールディングスは販売縮小で米ドル債の流通利回りは3000%を超え債務不履行を織り込んでいる。22年販売額7兆1000億円で中国トップだが先行して支払った開発用地と建設・建材の代金を数年後の住宅販売で回収する不安定な資金構造。
・株式時価総額は4100億円とピーク時の9割超減少し債務総額は25兆円程度あり、住宅引き渡しが済んでいない顧客の契約負債が13兆円ある。

・中国では20年夏に不動産大手の財務状況への監視強化した。負債比率などによって資金調達規模を制限する3つのレッドラインから総崩れとなった。
・仮に中国の住宅価格が1割落ちれば2兆円評価減となり、在庫負担を軽減するために安売りすれば保有資産の評価損が膨らむ悪循環。1年5ヶ月ぶりに香港取引所で前回終値に比べ87%安で始まり79%安で取引を終えた。

 

【現在中国が打ち出す株価対策】

 

・株式取引にかかる印紙税率を半減
・上海、深圳、北京での取引所で株式売買手数料を軽減
・企業の大株主における自社株売却の制限
・新規上場の段階的な抑制
・株式取引所の取引時間延長を検討

 

『中国衰退の管理』


・先進国になれない中所得国の罠、政権信用を失うタキトゥスの罠、覇権国と台頭する新興国が戦火を交えるトゥキディデスの罠

・22年出生率1.09で人口置換水準半分、若年失業率発表の停止、米国は悪い人々が問題を抱えると悪事を働くとバイデンは述べる。3つの罠すべて当てはまる。

・官民総投資GDP4割を超え20年起きたツケ、デフレ懸念は日本より悪くなると米国の意見が出ている。

 

『経済苦境が中国政府をより強硬にする側面』


【対外行動を融和にする要素】
・軍事力に回せる予算が減る。

・投資、貿易を増やすため他国との緊張緩和を迫られる。

・外国からの投資に向け、地方政府も対外交流に動く。
【対外行動を強硬にする要素】
・世論の不満が高まれば、外交問題で妥協しづらく。
・国力が衰える前に台湾統一などを急ごうとするリスク。
・ナショナリズムで国民を束ねるために強気の対外行動に出る恐れ。


【楽観シナリオ】
経済テコ入れを優先し、対外融和に修正→東南シナ海、台湾海峡の緊張和らぎ米中・日中関係も改善。
【中間シナリオ】
経済テコ入れと同時に強国路線両方を進める。→現状のほぼ延長線上
【悲観シナリオ】
国内の不満を反らし、共産党の求心力を保つため対外強硬を加速→アジア太平洋の海域、日米欧など緊張高まる。

【極端なシナリオ】
共産党地が揺らぎ、体制崩壊の予兆も。→中国が予測できない行動リスクあり。